2012年09月19日

津軽 太宰治

津軽 太宰治 新潮文庫

 作者36歳、ときは敗戦前年昭和19年、作者が入水心中で命を絶ったのは、昭和23年です。大きな戦争のさなかに生まれ故郷津軽を3週間旅した記録です。青森県が舞台なので、先日読んだ「飢餓海峡」水上勉著が最初に思い浮かびました。ただこちらの舞台は下北半島です。次に同じ昭和19年に放浪していた山下清画伯、戦後憲法の英文翻訳に立ち会った白洲次郎氏、同時期のできごとやらが頭の中で重なりました。それから吉幾三さんの歌もひらめきました。
 戦争中とは思えないような内容の旅行記です。戦争があったのは、都市部だけで、日本の田舎ではいつもながらの生活が続いていたという印象を受けました。
 文章が落ち着いていて読みやすい。心が穏やかになります。旅に出たくもなります。わたしも3週間仕事を休んで旅をしたいけれどそれはできない望みです。
 日本の自然もまんざらではないと見直しました。小説創作の基本は日記を書くことだと再確認もしました。54ページ、朝の魚売り。就学前に住んでいた島での生活がよみがえりました。
 津軽の歴史に関する記述はとてもおもしろい。力士の名前が頭に浮かんでくる。地理解説というよりも歴史書です。作者は悩みがない人という印象をもちました。何度も自殺を試みた人とは考えられません。育ての親「たけ」については、人生はタイミングで決まっていくと感じました。理屈はあとからくっついてくるものです。たけに対する作者の想いはとても深い。東京タワーの作者リリー・フランキー氏もこの本を読んだのでしょう。
 結びの言葉はさみしい。


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