2012年09月08日

幻夜 東野圭吾

幻夜 東野圭吾 集英社文庫

ありがちな暗い話の出だしです。
現実に起きた自然災害の現場で架空の犯罪を設定することは災害被害者への冒瀆(ぼうとく)になるような気がします。阪神淡路大震災の援助活動に参加しましたが、店舗荒らしとか強姦とか、そんな犯罪が起きたということは聞いたことがありません。わたしがまじめすぎるのでしょうか。
人間を見る目が鋭くて深い。この本は同作者著「白夜行」の対(つい)となっています。水原雅也は桐原亮司、新海美冬は唐沢雪穂となっています。「白夜行」では主人公ふたりの姿は見えない、しかし「幻夜」ではふたりの姿が存在しています。
ひとりの人間の思考(新海美冬)を加藤刑事が追っていく。そこに義理の姉頼江が加わり最後に水原雅也が決着をつける。8章後半からふたりの協力関係が崩れる。608ページから種明かしが始まる。全体で800ページの本ですが読みやすい。遅読のわたしでも1日に150ページぐらい読めました。
人間というものは必ず歳をとるもので、女性はいつまでも若さと美貌を保つことはできない。ずいぶんまえに「卑弥呼」の本を読んだことがあります。若い卑弥呼は男たちをその魅力で手なずけるのですが、やがて彼女は歳をとり、男は誰も相手にしてくれなくなったという記述がありました。
この本の主人公美冬についてもそのように考えながら読んでいたら後半は美貌の維持に関する手法が語られていました。
犯罪を起こす機会が訪れたという「一期一会」そして、いちずに愛するという作者のテーマです。水原雅也について、人間は罪を犯すとこうなるということが、著者の作品「手紙」にも通じます。しあわせをつかみ損ねた男、水原が可哀想です。不幸はお金がないことから始まっている。

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