2012年09月02日

夜のピクニック 恩田陸

夜のピクニック 恩田陸 新潮文庫

 高校生が読む本かなと感じながら読み始めた。(実際は、おとなになって、若い頃をふりかえる物語でした。)遠くからながめる視線になる。構成はどうなっているのかとか。推理小説だろうか。
 登場人物が増えてきたので、文庫本の隣に手帳をのせて人物相関図を書いた。揺れる電車の上でアメーバーのような図を書いてみる。登場人物である後藤梨香は作者自身だろうか。何を書くにしても、作者の体験が内容につながっていく。48ページを過ぎたあたりから話が動き出す。話は重くなる。異母きょうだい、異父きょうだいについても作者に経験があるのだろうか。やはり推理小説のようだ。殺人事件が近づいてきた。(読み終えて、結局殺人事件はなかった。)
(つづく)
 学生時代をふりかえっての郷愁だろうか。
 思い起こせば、学校にいる間は平等だった。
 卒業後それぞれの進路は千差万別に別れていく。
 結婚する者、しない者。こどもができる者、できない者。出世する者、しない者。貧富の差は広がり、病死する者、事故死する者。違いが広がっていく。
 話がなかなか動かないので斜め読みを始める。
 貴子と融(とおる)の恋愛関係には無理がある。人間のドロドロとしたものが出てくる。生まれながらに負ってきた不幸。誰しも他人に知られたくない秘密がある。
 何でもないことが過ぎてみればとても大事だったと思うという歌のフレーズがよみがえってきた。貴子の主観による文章、続いて融(とおる)の主観による記述がなめらかだ。心がつながりあう楽しさがある。この本を読んでよかったという気持ちが湧いてきた。ラスト近くの記述には涙がにじんでくる。

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