2012年08月16日

積木くずし 穂積隆信

積木くずし(完全復刻版)穂積隆信 アートン

 読み始めにある警視庁職員の言葉に共感しました。「いじりすぎましたね」。それは尾を引きます。いじくられると、尊厳が傷つくのです。心ではこれではいけないとわかっていても体がいうことをきいてくれなくなります。自分で自分をコントロールすることができません。一度生まれた奥深い憎悪はなかなか消えてくれません。
 放任主義。この本にはそんな両親の「甘さ」が満ちています。金銭と物質を大量に提供すればこどもは壊れます。私は作品中には登場人物は誰もいないと感じます。これはとある親子の物語ではなく子育ての指南書です。
 この本をなぜ出版されたのか疑問です。中身は家族と周囲の人々の機密事項です。出版によって、たくさんの人たちが迷惑を被ったことでしょう。それをさしおいてでも出版化したことは、著者の自己顕示のための欲望を感じます。 しかし、読者にとっては読みたい本です。この本は読者自身が犠牲にならずに読者自身の境遇を救ってくれます。娘さんは心の病だったような気がします。彼女にはともだちがたくさんいるのではなくて、ひとりもいなかったのです。中学では格好のいじめの対象だったでしょう。
 初版後20年以上が経過した本ですが、社会における親子像は今も変わりありません。いつの時代においても積木くずしになっている親子は存在します。社会システムが今のままであり続ける限り、親子全体の何パーセントかは積木くずしになるという日本社会の宿命なのでしょう。


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