2012年08月17日

恍惚の人(こうこつのひと) 有吉佐和子

恍惚の人(こうこつのひと) 有吉佐和子 新潮文庫

 恍惚=老人の認知症です。話は老妻の葬儀まで進みました。今はもう消えかかっている葬儀にまつわる昔のなりわいが記述されています。
 同じ敷地に別棟で住む姑(しゅうとめ)が亡くなり、残った認知症の舅(しゅうと)の世話は長男の嫁がするというところまできました。素朴な疑問として、なぜ舅のこどもたちである長男はじめそのきょうだいは親のめんどうを看(み)ないのか。世話をする嫁には相続をはじめとして、夫と共働きで得た家屋の所有権利がないのか。社会的問題へメスが入り始めました。
(つづく)
 夫の父のめんどうをみるお嫁さんの苦労と自分や夫も認知症になるのではないかという不安と怖れ。厳格でわがままだった夫の父が幼児へと回帰する。自分のこどもたちの顔と名前を忘れる。さらに話は進み近所の高齢者女性から恋愛攻勢を受け始めたところまできました。老いたというのに妖艶なしぐさの女性。さて、人はどのように老いていくべきなのかを考えるのです。
 後半部分はまるで別のお話のようです。最後には静かな平和が訪れます。「老いる」ということについて考えさせられました。

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