2012年08月13日

告白 チャールズ・R・ジェンキンス


告白 チャールズ・R・ジェンキンス 角川書店

 北朝鮮拉致被害者の手記です。さきほど読み終えました。約250ページ、すべてのページにびっしりと文字が並んでいます。最初は、インタビューを翻訳しながら原稿起こししたものと思っていましたが、そうではなく、ジェンキンス氏本人が英語で原稿を作成してできあがった1冊であることが最後にわかりました。自力で家族を連れて渡米するための費用をつくるための出版契約料確保が目的です。40年間の出来事を北朝鮮の監視下で日記にしたためていたとも思えず、脳にシワとして深く刻み込まれていた記憶をよみがえらせて書かれたものなのでしょう。英語タイトル「To tell the truth」が告白というよりも真実を語るために私は勇気を持ってこれを書きましたと読みとれます。
 書いてあることは、ふーむとうなることばかりです。北朝鮮での暮らしは、私の祖父や曽祖父が生きた日本の貧しかった頃を思い出させてくれます。意外だったのは、ジェンキンス氏が上層部と激しく対立していたことです。私は実質囚(とら)われの身となった人たちは、暴力という脅威に押さえつけられて、従順になるものと思い込んでいました。自分の意思を貫くためには考えを深く掘り下げ、知恵を搾り(しぼり)出して行動していくという彼の態度からはアメリカ人の魂を感じました。
 本の内容には、このことを公表してもいいのだろうか。彼は狙われるのではなかろうかと危惧する部分あります。ジェンキスファミリーの今後の無事としあわせな暮らしをお祈りいたします。

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