2012年08月08日

犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳


犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 東京創元社

 作者はドイツ人で弁護士です。作品は検事の目で、素材はドイツ国内で発生した11の犯罪に関する短編です。事件は架空のものでしょう。読んでいて、ドイツ国に対するイメージが変わりました。それまでは、ビールとソーセージの国ぐらいにしか思っていませんでした。けっこう暗い。「徹底的」という言葉が国民性を表わしています。日本人の完全主義とはまた違って、硬さが感じられます。犯行はグロテスク(異様、怪奇)です。それから登場する国や国籍の種類が抱負です。エジプト、ギリシャ、レバノン、ベトナムなど、日本の記述も登場します。
 後半は、精神障害、人格障害を扱ったものとなっています。それぞれの短編は短く、短時間で読める内容です。星新一さんのショート・ショートぽい。
 駆け足で感想を書いてみます。「フェーナー氏」結婚という束縛に耐えられず妻を殺害する。独特な筆記形式です。碁盤に碁石を置いてゆくようです。加害者=被害者。耐え切れなくて犯行に及ぶ。正当防衛。推理小説ではない。人間心理を深くえぐる哲学です。「タナタ氏の茶盌(ちゃわん)」日本製の茶わんで、1581年製、この茶わんがもとで争いが生じたそうです。盗人のドイツ人若者ふたりが同氏宅へ入って、(日本式)の住居に驚いています。よくこんな家に人が住めるなと感想をもらしています。射的の中心を瞬間的に射抜く(いぬく)ように文章を紙に落としてあります。そのような方式でこのあとの短編も続きます。「チェロ」すごみあり。あからさまです。「ハリネズミ」犯罪者一家に素行が違うこどもがひとり生まれる。イソップ寓話(ぐうわ、動物を登場人物にした教訓的なお話)のようでした。「幸運」骨組みの記述だけで文章が綴られてゆきます。情緒の付加はありません。読後のさわやかさはありません。それがタイトルの「犯罪」とぴったりきます。「サマータイム」ありそうでない。なさそうである物語でした。「正当防衛」武士の世界を観るようでした。殺人に威嚇(いかく)はいらない。必要最小限の動きで急所を傷つけ死に至らしめる。話は脱線しますが、当然、お金のことがあちこちに出てくるのですが、「ユーロ」の価値がわかりません。調べてみました。1ユーロ=97.14円。100円ということにして換算しよう。最初の作品「フェーナー氏」だと、医師である彼の資産は7500万円ということになります。「緑」ラスト1行の意味をとれない。ドイツ人だとわかるのでしょう。「棘(とげ)」警備員の精神が破滅へと向かってゆく。このあたりから精神障害モノになっていきます。そこには偶然がからんできます。「愛情」愛する人を食べたい。人格障害です。「エチオピアの男」胸にしみるいいお話でした。涙なくしては読めません。考えたのです。人間がこの世に生まれてすることは何か。それは、自分の居場所さがしです。その目的は、しあわせになるためです。
 その他、ドイツの司法制度に関する記述があります。日本とは異なっています。ただ、読んだだけでは
よくわかりません。全体の印象としては、ドイツはそれほど大きな国ではない。ヨーロッパという地域の
中では、ヨーロッパのよその国とは雰囲気を異にしているというものでした。


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