2012年07月19日

ある小さなスズメの記録 クレア・キップス


ある小さなスズメの記録 クレア・キップス 文藝春秋

 特異な内容です。1940年7月1日、ヨーロッパはヒットラーの影響で戦争状態でした。イギリスに住む筆者(女性。1938年夫死亡)は、生まれたてでまだ羽毛も生えていないスズメのヒナを見つけてミルクを与え始めます。スズメにクラレンスと名付けたものの、スズメ本人は「BOY(坊や)」と呼ばれたときだけ反応します。BOYに生後6か月からピアノを聴かせると彼は歌を唄いだします。(もちろん鳥のさえずりです。)やがて各種の「芸」を覚えて筆者に披露してくれますが、筆者以外には気が向いたときだけしか演じてくれません。筆者はこの本を「スズメの伝記」と呼びます。わたしは、「自分は人間だと思っていたスズメ」とか「スズメと筆者の愛情物語」と呼ばせていただきます。1952年8月23日、クラレンスは永眠しました。わたしはまだ生まれていません。1976年、筆者は86歳で亡くなっています。思うに、1940年に姿を現したクラレスは、1938年に死去した夫の生まれ変わりだったのです。未亡人となった妻をいたわるために夫はスズメに姿を変えたのです。加納朋子著「ささらさや」を思い出しました。亡き夫が「音」や「風」になって、さやさんとユウスケくんを守ります。
 クラレンスは親鳥から邪魔だからと巣から突き落とされたスズメです。足と翼に欠陥があります。ふつうなら死んでいた命です。野生のスズメなら天寿をまっとうすることは至難の業です。クラレンスは、延命治療も受けて12年間生きました。彼は人間のようです。活気に満ちた若者の時期があって、恋人探しをする。やがて、スズメと筆者はともに老いていきます。スズメも老いると幼児化します。互いが支えあいます。気のもちようとか、楽観的なほうがいいということを教えられます。気に入ったのは、70ページ、一日の最初のあいさつに、筆者のところに飛んできて、「暁(あかつき)の歌」を聞かせてくれることだった。宝物であり、消えない思い出となっているという一節です。目覚めたとき、おはようと言ってくれるだれかがそばにいることは幸せなことです。


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