2012年07月16日

エバーグリーン 豊島ミホ

エバーグリーン 豊島ミホ(としま) 双葉社

 "Evergreen" というのは、どういう意味だろう。日本語訳は「常緑樹」とか「いつまでも若々しい」ですが、わたしは、「まだ青い」と解釈しました。青春時代のほろ苦(にが)い思い出です。
 中学校の音楽バンドのメンバーたちが登場します。主人公は宮本進(シン君)ギタリスト、山田君がベース、三村君がドラマー、加賀君がボーカル、吹奏楽部の松田綾子さんがシン君に心を寄せて、ふたりは近づきます。ひさしぶりに読むさわやかな物語です。女子の心理は柔らかです。シン君と綾子さんは、卒業式のあと、10年後のこの時間、この場所で再会しようと約束します。それは、3月14日午前10時、通学路の道です。その場面を読んだのが3月16日だったので、身近に感じました。シン君は演奏家を目指し、綾子さんは漫画家を目指します。
 わたしは読み進めながら思いました。10年後のふたりの恋愛は成立しない。それぞれに恋人ができるでしょう。過去と現在にあるふたりの恋人の両方を手にすることはできない。再びシン君と綾子さんの恋が燃え上がったとしても両者の恋愛は成就できないだろうし、それぞれ既に居る恋人も失うことになるでしょう。これは同性同士でもいえることで、若い頃に仲がよかった友人同士が数十年ぶりに会っても、もう昔のように無邪気に遊ぶことはなくなるのです。大人になるにつれて、利害関係だけでしか人とつながれなくなります。
 舞台は東北の雪国という設定です。山が近くにある土地のようです。中学校の卒業は節目です。古い話ですが、チューリップというバンドの歌声が脳裏によみがえりました。シン君は、何も無いこんな田舎町で一生を過ごしたくないと叫びます。歳をとってみると、何も無い田舎町で、平穏無事に一生を過ごすことが素敵なことに思えます。


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