2012年07月08日

くまとやまねこ 湯本香樹実

くまとやまねこ 湯本香樹実(かずみ)文 酒井駒子絵

 とある本の巻末にあった本の紹介コーナに「名作」とありました。読み終えて、やはり「名作」でした。絵本なので、短時間で何度も読み返すことができます。最初は絵だけを追いました。死んでしまった小鳥の前で、熊が途方に暮れています。
 次に文章を読みました。秀逸です。選び抜かれた言葉と高い水準の文章が続きます。何度もあるいは何年もかけて練りこまれた文章です。文章表現が巧みで心がこもっています。
 親しい人を亡くす。近しい人を亡くす。日にちが経てば経つほど、悲しみは深まります。ああすればよかった。こうしてあげればよかったと悲観に暮れます。
 忘れられない亡き人。忘れるように勧める周囲の人。亡くした人の代わりに現れる新しい人、それがやまねこです。やまねこは、熊の淋しさとか、悲しみに共感してくれます。熊と小鳥は動物の種別は異なるけれど、恋人同士なのです。あるいは、夫婦を擬人化してあるのです。
 やがて熊は、立ち直るのです。つらくとも、死ぬまでは、生きていかねばならないのです。

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