2012年07月05日

さぶ 山本周五郎

さぶ 山本周五郎 新潮文庫

 「さぶ」というのは人の名前で、彼が15歳のときからスタートします。タイトルは「さぶ」ですが、物語のほとんどは、さぶの同僚である同い年の「栄二」のことが書かれています。時代は江戸時代です。ふたりは、芳古堂という襖屋(ふすまや)さんのようなお店で住み込み仕事をしています。職人さんの卵です。明治生まれの祖父が丁稚(でっち)奉公をしていた頃の思い出話をわたしにしてくれたことがあり、そのことを思い出しました。
 通勤電車の中で読み継いだので、いまいち物語の展開をはっきり把握できませんでした。458ページの長編です。
 栄二とさぶ、おみつとおのぶをめぐる、からみあった恋愛関係があります。みつは栄二が好きで、さぶはのぶが好きで、のぶは栄二が好きなのです。
 栄二は、無実の罪が発端となって、お役所に捕まり人足寄場なる準刑務所のようなところへ収監されます。栄二は、罠(わな)をかけて自分を罪に陥れたのは誰か、その人物を殺してやるという怨みをもちながら生きていくことになります。
 嘘つき人、だます人ばかりが世にはばかる。収監された場所には、栄二と同様に罪なき人々が集められて土方仕事に従事しています。役所のおさむらいさんたちは、彼らにやさしい。栄二を陥れた犯人は、物語の最後のページまできてもはっきりしません。犯人の候補者はふたりです。どちらが犯人かを推察する読者です。どちらが犯人にしても、心あたたまる物語であることに変わりはありません。人は、やさしくされるとやさしくなれるのです。


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