2012年07月03日

ちくま日本文学 色川武大

ちくま日本文学 色川武大(いろかわたけひろ) 筑摩書房

 短編集です。
「ひとり博打(ばくち)」私と砂漠との関係から始まる。面白い。点が線になり面になっていく。作家になるべき人です。
「空襲のあと」わからなかった言葉「素封家(そほうか)」大金持ちです。空襲後の死体の山、そして幽霊話。
「尻の穴から槍が」66ページ、老編集長との出会いは、「いねむり先生」での伊集院氏と色川氏の出会いにおいてその立場が逆転して、過去へさかのぼる再現シーンのようである。
「名なしのごんべえ」赤塚不二夫氏の漫画の世界が現実にこの世にあった。レレレのおじさんもいるし、ニャロメもいる。
「アラビアの唄」ちょいとでましたなんとかかんとか。おもしろい。笑いました。膨大な人名の列挙に驚嘆しました。次から次へと湧き出てくる音楽の知識と体験、批評。のめりこむ人です。
「嵐と灯とけむりたち」Goodです。昔を思い出しました。
「善人ハム」今はもうこの世にいない人たちです。
「ふくちんれでぃ」リズムがあります。落語のようです。
「オールドボーイ」本物の男は黙って殴られる。
「男の花道」賭けの金額とのめりこむ欲望の水準は高い。ついていけない。崩れてゆく人たちを描いています。
「離婚」わたしはこれがいちばん好みでした。小説らしい小説です。会津すみ子という女性の「自己愛」ばくち、借金、子のない夫婦。同性愛へ至る元妻。どのような生き方をしようと、人は最後に必ず死ぬ。
「練馬の冷やしワンタン」生活費を稼ぐために原稿を書く。睡眠障害で常人の4倍の疲労感を常に背負っていた。本人にとって気分がいいものではない。人間だれしも死の瞬間にほっとするのでしょう。

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