2012年07月02日

ダリアの笑顔 椰月美智子

ダリアの笑顔 椰月美智子(やづき) 光文社

 4本の短編です。雑誌に掲載されたものが集められています。主人公となるファミリーは綿貫家です。角田光代著「空中庭園」形式で、家族の一員がひとりずつ語るものとなっています。
「ダリアの笑顔」世帯主が綿貫明宏(わたぬき)42歳、オタザワ繊維㈱総務部経理課係長、妻春子41歳生命保険会社外交員、長女真美小学校6年生、長男健介小学校4年生リトルリーグのピッチャーで、この短編では、長女の小6真美さんが語ります。母親が一戸建てを買いたいと言い、父親ははっきりしない態度、クラスにはいくつかのグループがあって、自分はぱっとしないグループの一員、ダリアの笑顔とは、リーダー的なグループの一員である早紀ちゃんを指し、自分も早紀ちゃんのような笑顔を出せる人になりたい。平和な日常生活を丁寧に描写して感慨をつくりだす文章に長(た)けています。
「いいんじゃないの40代」春子さんが語ります。漫画サザエさんを見ているようでもあります。時が流れて彼女は念願の一戸建てを手に入れました。日常の仔細(しさい、事こまか)を文章で上手に表現してあります。落ち着く物語の流れです。40代を老齢のごとく示してあるのですが、50代のわたしからすれば、40代はまだ若いと言わざるを得ません。40代はまだ現役バリバリで、無我夢中です。日々の生活を振り返る余裕はありませんでした。
「転校生」長男の健介君が語ります。転校生はふたごの男女で、男子はオカマ、女子は男っぽく、リトルリーグでいい球(たま)を投げるピッチャーとなっています。4人家族はそれぞれの世界をもちながら同じ家で生活しています。そして、それぞれの世界をあまり知りません。健介君が、捨て犬を拾ってきて、飼う、飼えないと、すんたもんだをしたあと、ゴマと名付けて犬を飼い始めます。案外この犬ゴマが家族の全体像を把握しているのです。
「オタ繊 綿貫係長」ご主人の明宏さんの語りです。元気はありません。サラリーマン中間管理職の読み手は身につまされます。ことに会社生活現役を引退した楠木さんとの会話、「(お互いに)友だちがいません。」友だちになりましょうという部分、それから、仕事関係と身内だけとしか会話がないという部分は的を得ています。あまりにも現実的で読みながら気持が退(ひ)いてしまいました。


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