2012年06月30日

にいさん(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ) いせひでこ


にいさん いせひでこ 偕成社

 にいさんは、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホを指し、にいさんと呼びかけているのは弟のテオドロス・ヴァン・ゴッホで、作者が弟に成り代わっています。
 「死」が小説や文学で扱われるのは常です。ただ読み手としては、「死」の文学ばかりが続くと暗い気持ちになります。意図したわけではないのですが、ここ数日死ぬ物語ばかりを読むことになって、いささか気が滅入っています。
 絵本なので、ページ数は多くありません。厚紙の表紙をめくって1ページ目そして2ページ目は、映画の始まりのようです。弟が床に落ちた1本のひまわりを拾おうとしています。ひまわり=ゴッホ(兄)です。次に、葬式行列が左から右方向へ粛々(しゅくしゅく)と動いていきます。絵本全体は紺の色調でまとめられています。そこにひまわりや麦の金色が合わさります。特徴はカンバス地であることです。縦横の布目が見えます。
 ゴッホは37歳で亡くなっています。日本でいうと、アメリカのペリーが来たときに生まれて、明治時代第1回衆議院議員選挙が行われた年に亡くなっています。生存中には評価されず、死後有名になった画家です。絵本の中には、オランダの農園で仲良く遊ぶ兄弟の姿があります。
 兄の生活を支えたのが弟です。栄光の影には必ず犠牲者が必要です。だれかがだれかを1番にするためになにかに犠牲を払わなければ、栄光は手に入りません。兄と弟は似たもの同士です。仲が必ずいいわけでもありません。ふたりは生まれながらにライバルであることもあります。ゴッホ兄弟の場合は、弟が兄を思いやりました。進路に関する兄と父との対立を目の当たりにし、おそらく両者の調整役を果たしたのでしょう。真面目に思いつめれば思いつめるほど精神状態がおかしくなっていく兄を見つつ、弟はどうすることもできなかった。画商の弟は結局、兄の作品をまったく売ることができなかったようです。「厳格であること」は家族を幸福(しあわせ)にしない。父親と兄に対して言えることです。


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