2012年06月27日

ピーター・フォーク自伝 刑事コロンボの素顔 田中雅子訳

ピーター・フォーク自伝 刑事コロンボの素顔 田中雅子訳 東邦出版

 NHKテレビで刑事コロンボを見ることが好きでした。でも、成人してから再放送を見て、コロンボが嫌いになりました。外見はぼろぼろだが、頭脳は明晰(めいせき)という設定の刑事像でした。こどもの頃は、彼のユーモラスさもあって、自分もそうなりたいと憧(あこが)れました。大人になって再放送を見たら、意図的に相手を油断させて落としいれる手法をとる陰険さがあることに気づきました。とはいえ、コロンボの性格設定は、世界中の国々で受け入れられたようです。役者であるピーターさんの活動の場は地球規模です。アメリカ、フランス、ユーゴスラビア、ロシア、キューバ、ドイツなど仕事で移動しています。前職は米国予算管理局の官僚ということは初めて知りました。自伝の内容はとても明るい。もう80歳を超えておられるので、思い出話が主になります。幼児のときに目の病気で右目の眼球を失っておられるのですが、普通に育ち野球もプレイヤーとしてプレイされています。彼はやんちゃです。ガラスの義眼を取ったりはずしたりが笑いにつながっています。
 巻頭にある数枚の写真と文章がつながっています。俳優さんたちのお名前を聞いてもだれなのかはわかりかねますが、仲間が多いという印象が残ります。自分がやりたいことを職にできた方はしあわせ者です。実力とチャンス、そして友人が、役者の成功の秘訣とお察しします。楽しい人生を謳歌(おうか)されたことが伝わってきて、読み手までHAPPYな気分になります。落語の小噺(こばなし)を読んでいるようです。気持ちが落ち込んだときに読むといい本です。
 いっぽう、役作り(やくづくり)やセリフ回しにはこだわります。ひたすら頑固です。妥協しません。役者の世界では「個性」が命と理解しました。ともすれば、自分の主張を押し殺して体勢の流れに従い、組織にすがって生き残ろうとする人たちが多い中で、彼の存在はしっかりと輝いています。相手が了解してくれないのなら、最後は自分が脚本を書くという能力と自信があったからこそ主張できたのでしょう。
 読者が期待する刑事コロンボに関する記述は、全体の3分の1ぐらいです。彼の車であったプジョーとの出会い、ドラマ開始後の最初の5分で犯人と手口が視聴者にわかる展開手法と事件解決にたどりつくまでの糸口づくりの裏話が続きます。刑事コロンボは、質の高い1時間40分の推理ドラマです。

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この記事へのコメント
こんにちは!
ピーター・フォーク出演の伝説的映画「カリフォルニア・ドールズ」が11月3日(土)より公開になります!
ぜひ劇場でご覧ください!
http://www.californiadolls2012.com/
Posted by VALERIA at 2012年10月25日 11:36
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