2012年06月24日

ボクの町 乃南アサ

ボクの町 乃南アサ(のなみ) 新潮文庫

 509ページの長編です。ラストシーンまできて、この作家さんは、「押さえたな」と気づきました。まずは、違う結末がつくられていたなと推察します。あえて、その結末を選択しませんでした。そこが惜(お)しい。本では最後が、主人公交番勤務の巡査(見習い期間中)高木聖大(せいだい)くん、22歳、身長174cm、体重66kgの女好きの話でまとめてあります。最初に作者が書いた結末は、職業人として、収入のためだけに働いているのではない。生きがいという崇高な理想を追求するために働いているという大きな感動を呼ぶものを用意していたことでしょう。それをあえて押さえて、冒頭の導入部で設定した彼の女好きという個性を結末でも出し、最初から最後まで1本の線を引くことを優先したのです。残念です。
 同作者の名作「ニサッタ、ニサッタ」の主人公片貝耕平くん24歳がこの物語の主人公である高木聖大くんです。同様に竹田杏奈(あんな)さん20歳が小桜まひるさん24歳です。ダメ男をまんなかに置いて、そばに立派な女子を置く。この構成でいいと思う。このパターンでこれからいくつもお話を書いて欲しい。ワンパターンだとは思いません。率直に言って、わたし、好きだなあ。この作家さん。自分に合っています。
 以下、読書の経過をたどってみます。
 「ボクの町」というタイトルを手にしたときに思ったのは、「炭坑の町」というものでした。なんとなくそう感じたのです。でも読み始めると交番で働く駆け出し巡査の話でした。「ボクの町」と強調するほど、ボクと町が密着していませんでした。その点で力不足があります。最後は無理なこじつけになっています。わたしはいつも本のカバーをはずしてから本を読みます。読み終えてカバーをつけようとしたら、カバーに巡査の絵が書いてありました。わたしは、いつもカバーの絵は見ません。それから、作者のあとがきとか、別の人の解説も読みません。見たいのは物語部分の文字だけです。
 取材メモに基づいて、事例が順次列挙されていきます。親子関係の崩れも描かれていきます。人間社会の嫌な面が前面に押し出されていき、高木くんはもう仕事を辞めたいと思うのです。なりたくてなった警察官ではないし、女性が大好きでナンパが得意、ピアスを始めとしたおしゃれ好き、そして喧嘩っぱやい。彼はだんだん、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両津勘吉さんに似てきます。人間なんて自分のことだけしか考えていないとか、町の人々の自分にとっては、「関係ない」という言葉の連発とか、高木くんの怒りはよくわかります。さらに女心はわからない例として、同級生女子たちの言動も可笑(おか)しいくらいによく伝わってきます。「関係ない」という人の言葉に対する対処法として、小桜まひるさん(ニックネームはあひるさん)が言った言葉には感銘しました。


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