2012年06月22日

モロッコで断食(ラマダーン) たかのてるこ


モロッコで断食(ラマダーン) たかのてるこ 幻灯舎文庫

 いい本です。初めての異世界体験ができます。イスラムの風習とか祈りとか、みんなが断食をするという宗教儀式は日本にはありません。
 誰しも人生のなかで、長い休暇をとれて旅に出ることが何度もできたらいい。そうすれば、世界の平和につながる。
 断食は、夜明けから日没までの間で1か月続きます。だけど、夜は食事ができます。知りませんでした。減量によさそう。飢えを経験することで、食べ物がない人の気持ちがわかる。食べ物に感謝するのです。
 本文は何度か書き直されている形跡があります。作者の1作目であったインド旅行記とはずいぶん筆致が違います。文章がきれいに整理整頓されています。わたしはこちらのほうが読みやすい。ただ、インド編のような勢いはありません。
どなたにもお勧めしたい1冊です。イスラムの国に対する偏った感じ方が変わります。この本を読むと、こころがやさしくなれます。ギスギスした現代日本人の生活のありようが間違っていると気づかされます。
 青年カリッドはいちずな人です。
 206ページ付近、作者は地元の人たちに大変な迷惑と心配をかけています。君は異邦人なのです。
 モロッコというアフリカの国に雪が降って寒い冬があることは意外でした。後半は海難事故に遭った船から脱出する映画「ポセイドン・アドベンチャー」を見ているようでした。
 だけど、どうして最後に文脈が崩れてしまったのだろう。インド編の冒頭のように作者の自己陶酔になってしまいました。本人がこう書きたいという強い意志なのか、編集者の意向なのか。作者の気持ちはどんどん盛り上がっていきますが、読み手は引いてしまいます。

 読み終えて3日が経ちました。冷静に考えてみる。
 この本を読んで、自分も外国をひとり旅しようと思いつかないでください。
 作者は周囲のひとたちに大変迷惑をかけています。命を落としていても不思議ではありません。そしてそのことに自分で気づいていません。重症です。

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