2012年06月18日

英語のバカヤロー 古屋裕子編


英語のバカヤロー 古屋裕子編 EARTH STAR BOOKS

 バカヤローとの標題ですが、内容は暴力的なものとはほど遠く、上品で理知的です。英語で苦労された著名な方たちの思い出話とか、英語学習者への助言集です。勇気と自信を与えてくれる良書です。登場されるみなさんが思うに任(まか)せぬ英会話に耐えておられます。そして、複数の人たちがインタビューで、英語ができなくて、外国でひきこもりになった体験を率直に答えておられます。
「解剖学者 養老孟子氏」英語学習者が感じつつやがて慣れていく部分について書かれています。紹介されているのは、けして水準が高度で難解な英語学習手法ではありません。
「経済学博士 竹中平蔵氏」語学学習は努力である。中国人や韓国人のように積極的に話す。肌で聞く。厚かましくなる。
「電子工学者 中村修二氏」英語は道具。通訳も道具扱いという状況が続いているような気がします。雇用する立場の人間のほうが上なのです。雇用する人は英語を話せません。でもこれからは、雇用する人間もある程度は話せないと交渉や契約が成立しにくい時代になっていくのでしょう。35歳で初めて飛行機に搭乗したお話は、意外で面白かった。
「社会学者 上野千鶴子氏」77ページにある「メッセージとマッサージ」のお話は良かった。むだぐち英語がマッサージで、むだぐち英会話ができないと相手に情報を伝えることはできないというものでした。
「大学学長 坂東眞理子氏」凡人とは異なる別の世界で生きている人でした。
「前知事 浅野史郎氏」この本の狙いは「意外性」です。当然英語ぺらぺらだと思われる人がそうでもないのです。ただ、そうであっても、この方は、言語が大好きな人でした。習得に必要なのは「度胸」と助言されています。
「元国連事務次長 明石康氏」同氏がテレビで英語を話す姿を見たことがあります。カタカナ英語でした。通じるのだろうかとびっくりしました。よく考えてみると、世界中の人たちがネイティブ(生まれながらに)の英語を話すわけではないのです。英語以外の言語を話す人たちのほうが圧倒的に多いのです。それらの人たちとの交流はカタカナ英語でも通じるのです。同氏は秋田県出身で、英語の前にまず方言のなまりで悩んだそうです。129ページにある、感情的になったほうが負け、冷静で論理的になって、統計データで説得するという言葉に納得しました。
「生物学者 本川達雄氏」日本と西欧の違いを挙げ、両者は正反対と分析されています。
「中東研究者 酒井啓子氏」1950年代生まれのみなさんは、英語で苦労されています。外国で英語ができなくて、ひきこもり経験ありです。
「動物心理学者 松沢哲郎氏」アメリカ人は英語だけしか話せない。欧米人は、人間と動物を明確に区別するが、アジア人は人間と動物を同じ水準で考える。語学学習は暗記する。なぜそうなると考え出すとついていけなくなる。そういった分析を語っておられます。
「宇宙飛行士 古川聡氏」医師が宇宙飛行士に選ばれるようです。他の方も含めて、英語で論文を書くことは必須のようです。日本語社会と英語社会の表現方法は正反対であることには、わたしも感じていたことです。帰納法(きのうほう、説明から結論)と演繹法(えんえきほう、結論から説明)の違いです。
「脳外科医 福島孝徳氏」同時進行で3つの手術室で3つの手術を行っておられることにはびっくりしました。さらにやさしい英語で意思疎通を図られていることに再びびっくりしました。わからないのにわかったふりをしてはいけないということが同氏からのアドバイスです。
(総じて感じたことは、英語学習は幼児期から始めた方がいい。日本語もままならないわけですが、こと発音するとか聞き取るとかは幼いうちから慣れていないと身につかないでしょう。複数の国が隣接するヨーロッパでは、3か国語ぐらいを話せて当たり前ということも新発見でした。ヨーロッパのどの言語も文法が似ているに違いないと推測しました。みなさんが強調されていたことは、ジャパニーズイングリッシュでも度胸と気持ちで相手には通じるとういうものでした。)

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