2012年06月17日

幸せな王子 オスカー・ワイルド

幸せな王子 オスカー・ワイルド 訳 天川香代子(あまかわ) ポプラ社

 子どもさん向けの短い物語です。物言わぬ王子の像を始めとしてツバメや植物の葦(あし)など擬人法が用いられています。怖いお話でもあります。スリラーの側面が隠されています。
 16ページ、病気の男の子がルビー1個で助かります。あったかい気持ちになるとあります。わたしが思うに、そのほかの例示を含めて、一時的な財産の取得は一時的な安定でしかありません。与えられるものではなく自活できなければ、援助される対象者は、再び貧困に戻ってしまいます。
 最後に王子の像はぼろぼろになり、エジプトへ渡るはずだったツバメは死骸になります。そして、29ページに、心の汚いおとなたちの言動があります。
 この物語を肯定することも否定することもできません。失うものがあれば、得るものもあります。お金を失っても残ったお金で平穏に生活していくことができれば、憂(うれ)いは小さいものです。困っている身近な人たちを絶対に援助しないという生き方はできませんし、かといって共倒れになることもできません。人間界においては、金銭、財産に関する悩みは尽きません。

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