2012年06月17日

光ってみえるもの、あれは 川上弘美


光ってみえるもの、あれは 川上弘美 中央公論新社

 「センセイの鞄」は、たしかこの作家さんの作品だった。中途半端な様子を描き出すことが持ち味となっています。
 高校1年生の主人公男子江戸翠(みどり)くん。おかあさんは未婚の母の愛子さん。もうひとり同居しているのが母方の祖母匤子さんです。そして、ときどき訪ねてくるのが翠くんの遺伝子上の父親大鳥康郎さん、42歳独身フリーアルバイターです。翠くんの同級生が平山水絵さんで、彼と彼女は体の関係があります。もうひとり翠くんの友人が花田くんですが、彼はセーラー服を着ています。たしか「プリンセス・トヨトミ」でもセーラー服を着たい生徒が登場していました。どうして、作家さんたちは男子生徒にセーラー服を着せたいのか。
 中途半端な家族です。未婚の母は、翠くんの父親を受け入れつつもほかに付き合う男性がいるらしい。翠くんの彼女らしき平山水絵さんは、翠くんに自分を愛しているかとたずねますが、翠くんは明確に答えることができません。同様に翠君は、遺伝子上の父親に自分を愛しているか、そして自分の母親を愛しているかと聞きますが、これまた明確な返事がありません。母親である愛子さんも同様です。
 作者自身の現実体験を私小説にしてあるのだろうかと感じながら読み進みました。実際どうかは知りません。そのほか、国語教師の北川さんとか、舞台としては長崎県五島列島小値賀島(おぢか)が登場します。そこを舞台にして、父親と息子の家族の再生という表現はおおげさですが、心の交流をはかっていこうとする姿があります。感じ方は人それぞれでしょう。中途半端な関係のなかで何を基準にするともなく、静かに考察するわけです。


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