2012年06月17日
犬どろぼう完全計画 バーバラ・オコーナー
犬どろぼう完全計画 バーバラ・オコーナー 文渓堂
登場するのは、犬どろぼうを計画するジョージナ・ヘイズ小学校高学年ぐらいの女子、弟トビーは、幼稚園年長ぐらいを思わせる。犬を盗まれるのは、カーメラ・ホットモアふとっちょの中年女性ひとり暮らしです。ジョージナに連れて行かれる子犬がウィリーです。そのほか、ジョージナの母親(父親は行方不明)、自転車に乗ったホームレスムーキー(マルコム・グリーンブッシュ)などです。
母親とこどもふたりは、シボレー(車種)で暮らしています。家はありません。家賃が払えなくてアパートを追い出されました。ジョージナが犬を盗んだ目的は、犬を発見したときに飼い主がくれる謝礼が目的です。彼女は謝礼をアパートを借りるための資金にあてたいのです。
漫画「星守る犬」映画にもなりました。ホームレスになったおとうさんと飼い犬が車で放浪し、車で暮らすお話でした。最後は、ふたりとも異なる時期に亡くなります。悲しい。最近日本でも、車で暮らすホームレスは増加しているようです。ジョージナが自転車ホームレスのムーキーをホームレスだからと嫌うのですが、そのジョージナもホームレスです。ホームレスとは住居のない人を指します。病気や事故で働くことができない体になれば、だれでもホームレスになる可能性はあります。
どろぼうされた犬を人間のこどもに置き換えれば「誘拐」です。相手の大切なものを盗んで相手にお金を要求する行為は卑劣です。貧困が犯罪を生むとは思いたくない。貧困でも犯罪を犯(おか)さずに生活している人はいくらでもいます。福祉制度を一時期だけ利用するという手段もあります。貧困を克服するためには学力と知識が必要になります。勉強しましょう。また、お金のために人を殺す人もいます。「お金」はこわい。金銭管理ができる人になりましょう。
どうしてパパは家を出て行ったのだろう。考えてみました。夫婦関係の破綻、職場でのストレス、借金を返済できない。
ジョージナの犬どろぼう計画は、彼女の良心を試す計画です。ジョージナは、犬のウィリーがいなくなったことで嘆き悲しむカーメラの姿を見て気持ちが落ち込みます。ジョージナの心にある正しい心と悪の心の衝突が始まります。そのことを212ページで、最低の気分。やればやるほどますますひどくなる。もがけばもがくほど泥沼にはまりこむようだ。ぜんぶあたしのせいだと自分を責めています。わたしは、その部分の一節が気に入りました。罪を犯せば罰が待ち受けています。逮捕されてもされなくても、死ぬまで犯した行為が頭から離れません。人間は気楽が一番です。
自転車ホームレスのムーキーが英雄とか模範のように扱われている部分があります。彼は、お金がもらえなくても働くし、もちろんお金をもらうためにも働きます。そして、未来よりも過去を大事にします。自分が今までに何を成してきたかが大切だと犬を盗んだジョージナに説きます。くわえて、学校で教わることだけでは生きていけないとも表現します。
ジョージナが犬を見つけた謝礼をカーメラから受け取れば、ジョージナの幸せは、カーメラの不幸せからきていることになります。つまり、自分の幸せは、他人の不幸で成り立つのです。
読んでいてあてがはずれた予想を書いてみます。自転車ホームレスのムーキーは実は大金もちだった。(やっぱり貧乏)、ジョージナが書いて残した犬どろぼう計画は、彼女が逮捕されたときの犯罪証拠になる。(逮捕されなかった。)
最後に、特に気に入ったママのセリフを書いて終わりにします。「お金がないからといって、親を責めるな!」 痛快でした。
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