2012年06月16日
刑務所図書館の人びと アヴィ・スタインバーグ
刑務所図書館の人びと アヴィ・スタインバーグ 柏書房
洋画「ショーシャンクの空に」では、無実なのに殺人の罪をきせられた銀行員アンディがショーシャンク刑務所に収監されたあと、所内に図書室をつくります。映画の中だけの世界かと思っていたらこの本にめぐり会いました。アメリカ合衆国ボストンの刑務所図書室で働いた著者の随筆となっています。彼はあくまで司書であって、刑務官ではないし、受刑者でもありません。映画と現実はかなり違います。彼は結局退職しています。精神状態が不安定になったことが理由でしょう。
映画では新入りが鍵をかけられた独房で泣くところから始まります。この本では後半に同じ記述があります。ふつう人間は鍵をかけられた個室に閉じ込められた体験をもっていません。
守秘義務違反に抵触するのではないかと思うぐらい詳細が記述されていますが、外国のことであり宗教環境も異なるので理解できない部分が多々あります。順を追って感想を記してみます。
作者はユダヤ系アメリカ人です。ただしユダヤ教の規則を守りません。聖書のことも登場しますが日本人の私には理解不能です。刑務所の設計様式が登場します。日本の城です。収監された受刑者たちは外に出ることはできず、中で詩人になったり画家になったりして詩を書いたり絵を描いたりします。母子で収監されている家族もいます。各ページには文字がびっしりで、作者の病的な面が表れています。情緒不安定です。そもそも刑務所の図書室は刑務所職員にとって忌み嫌われる場所です。受刑者たちのたまり場であり、図書その他の備品は武器に代わるものです。出所後の服役者との再会は筆者の自尊心を傷つけるものでした。映画のような美しい再会はありません。報復が待っています。万引き、売春、薬物依存、盗みなどの体験をもった犯罪者たちを信じることは自らの墓穴を掘ることになります。筆者は心身症から環境適応障害にまで至ります。糸の切れた凧(たこ)のようになります。図書室をいいものにしようという希望はかないません。
受刑者に読み書きを教えるところから始めなければなりません。映画「怒れる七人(いかれるしちにん)」が何度か登場しますがその映画を観たことはありません。レオナルド・デカプリオの「ロミオとジュリエット」を放映したところ大好評だったとあります。まるで犬猫のように男女がじゃれあいます。オリビアハッセーが演じたジュリエットのイメージが壊れました。図書館内にちらかるごみ、本にはさみこまれる受刑者同士の「手紙」、多くの受刑者たちが子どもの情緒年齢にとどまっている。密告による落としいれ、出所後の薬物大量摂取による死、先日観た映画「ミッション・インポッシブル」での冒頭刑務所シーンが蘇り(よみがえり)ました。メサィア(救世主)、この言葉を知ったのは、佐藤多佳子著「聖夜」でした。シェークスピアの「オセロ」「マクベス」が出てくるページ付近は難解です。著者は図書室で文学教室を始めます。受刑者たちに本を書かせるのです。なかには才能ある受刑者もいます。しかし行動と言動は普通ではありません。
刑務所図書室を退職した著者はその後健康を取り戻しています。就職難だったことから収入を得るために一時的に就労したものです。図書館とは本来自由に出入りができてなにがしかの糧(かて)を得るところです。心や体を壊す場所ではありません。それでも刑務所には図書室が必要です。この世には答が出ないということが答になる場合があると結んであります。受刑者1000人のうち1人は図書室が必要な人間がいるとあります。
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