2012年06月16日

空中ブランコ 奥田英朗

空中ブランコ 奥田英朗 文春文庫

 いつつの短編が集まっています。いずれも主役は精神科医伊良部Dr.です。ふとっちょでこどもっぽい。
「空中ブランコ」サーカス団の空中ブランコ乗り山下公平さんが患者です。夢を見ているように読みました。山下さんの経歴、多数の転校経験は、自分自身の体験とも重なりました。
「ハリネズミ」やくざの狩野誠司さんが患者さんです。彼の奥さんが和美さん。この物語全体が、珍しい記述方式です。小説だからできる書き方です。文章は魅力的です。童話を読んでいるようでもあります。
「義父のズラ」池山達郎さん、彼もまた精神科医ですが、伊良部さんの患者になります。ここまで読んできて、伊良部Dr.とコンビを組む看護師さんは何者なのか知りたくなりました。巨乳で少々露出好き。その名をマユミさんという。元患者なのか、物好きなのか、何かしらわけありのような気がします。
 人間は自分のことしか考えない。財産、身分、プライド、学歴、家柄、人を評価するための物差しに対する攻撃的な作品です。まるで迷いがない文章がいい。いい話でした。癒(いや)されました。
「ホットコーナー」第一話と展開がかぶりそうです。失敗作か。坂東真一プロ野球選手守備位置サード。作者はこの設定で物語をどうコントロールしていくのだろうか。資本主義でも社会主義でも、人のいい奴が負けるように世の中のシステムはできあがっています。展開は第一話と違ったものになりました。
「女流作家」その職業のとおり星山愛子さんが患者さんです。

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