2012年06月16日

香港の甘い豆腐 大島真寿美

香港の甘い豆腐 大島真寿美 理論社

 日本に住む母子家庭の17歳女子高生が、まあ、もんもんとした暮らしを送っているわけで、その彼女が死んだと思っていた父親、これが香港人なのですが、彼に会いに香港までいく物語となっています。
 読み終えてみて、たいへん良質なよいお話でした。同じように、もやもやした気分をかかえてひきこもっている17歳前後の女子高生さんたちに読んでいただきたい1冊です。
 ラスト付近は、現実にはありえないことなのですが、それが「夢」になっています。どうせかなわないのだけれど、物語のなかでかなえば、それはそれで、うれしいし楽しい。だからこれでいいという気分にさせてくれます。読んでよかった1冊になりました。
 香港上陸の様子は、映画ゴジラの日本上陸を思い浮かべました。主人公彩美(あやみ)さんのもやもやしている感覚は、本を読んでいるわたし自身のもやもやした気持ちと一緒でした。親について考えてみました。親子関係の下地として血縁関係があるのですが、結局、血縁関係があろうとなかろうと、こどもがこの人は自分の親だと思えば親だし、思わなければ親ではないのでしょう。
 香港のおいしい食べ物が、幸せな気分を運んでくれる。あたたかい麺(めん)で心まで温まります。香港の魅力が伝わってきて、香港に行きたくなります。彩美さんにとっては、「行く」という感覚ではなく「帰る」とう感覚だったのでしょう。彼女は生まれる場所を間違えました。香港に生まれて育つべきでした。
 この作者さんは、自問自答形式の記述が優れています。読んでいてとても気持ちがよい。


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