2012年06月15日

秋月記(あきづきき) 葉室麟

秋月記(あきづきき) 葉室麟(はむろりん) 角川書店

 秋月は福岡県の馬見・屏・古処(うまみ・へい・こしょ)と続く山の向こう側にある昔の小さな都と覚えています。16才の頃、それらの山々を縦走したことがあります。秋の月とあることからロマンチックな雰囲気がただよいます。
 物語は西暦1845年6月6日江戸時代です。秋月藩の動きを大きく捉(とら)えながら主人公の間余楽斎(はざまよらくさい、旧名吉田小四郎、59才)の幼児期から晩年までの人生が描かれています。今でいうところの公務員世界です。
 小四郎は、妹みつの死をきっかとして、弱虫からのちのち武勇伝をもつ武士に成長していきます。友人たち4人と江戸へ修行に出たり、女性と出会ったり、柔術というよりも忍術使いを味方につけたり敵にしたり、剣術の達人と対決しながら秋月藩のために身を尽くします。よくできた物語です。
 不幸な話が多い。かけひきの世界が描かれています。武家社会(公務員社会)のあれこれは面倒くさい。お人好しは早死にするという設定はつらい。殺されてしまった吉次(石橋を築いていた長崎の石工(いしく))と村娘いとさんとの恋愛と葛(くず)で食べ物をつくる部分が良かった。
 芝居がかってはいるもののドラマチックな時代小説です。勝つためには「数」が必要です。「数」を集めきれない人間は勝負をあきらめたほうがいい。ただ、あきらめきれないからストーリーができあがっていく。

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