2012年06月13日

新装版ソウルの練習問題 関川夏央

新装版ソウルの練習問題 関川夏央(なつお) 集英社文庫

 ソウルに行ったことがあるので、親近感とか理解をもちながら読むことができました。
 さてこの本は1983年頃の韓国レポートです。昭和58年頃の様子でしょう。27年前のソウルの様子が書かれています。作者は30代なかばだったようです。韓国に戒厳令(夜間外出禁止令1982年、昭和57年まで)があったことを思い出しました。
 文庫本ですが、百科辞典ぐらいのボリュームがあります。通常の観察文・紀行文があって、下段に細かい注釈がついています。良書です。ハングル語に関する記述は歌を聴いているようです。当時と現在のハングル語に対するイメージは、180度変化しています。当時は難解な言葉、現在はわかりやすい言葉というものです。
 140ページあたりから続く韓国人から見た日本人に関する記述はGoodです。近くて遠い国である理由の分析です。当時はお互いに敬遠しあっていた関係があります。一度、相手国へ行けば気持ちに変化が生まれるのですが、訪問自体がなかなかできない。日本人については、こころの底に「償い」の気持ちが必要だろうと思いました。在日韓国人のがんばりについては目頭が熱くなりました。
 さらに細かい感想を書けるだけ書いてみます。
 ウォンの82年当時のレートは、100ウォンが35円。1万ウォンだと3500円。3年前の9月だと1万ウォンが850円です。ずいぶん違います。
 ソウルオリンピックを開催したときのライバル都市は、名古屋市でした。本書中で韓国人元校長先生が名古屋に勝てるとは思っていなかったという感想を述べておられます。絶対的に名古屋有利だったそうです。たいへんうれしかったと北朝鮮への対抗意識をからめて語っておられます。(1988年、昭和63年開催)いっぽう名古屋人は、立候補について冷めていました。
 ハングル語には、日本語で言うところの「あなた」、英語でいうところの「You」という言葉がない。やはり、不便だそうです。
 東アジア人は並ばない。行列をつくれない。並んでいたら電車には乗れない。バスにも乗れない。食料も手に入らないのかもしれません。いっぽう、日本人は、並んでいればほしいものが手に入るという恵まれた環境にあるそうです。
 日本人は「ああ、そうですか」を連発する民族と定義があります。とくに男性に多いのでしょう。
 「コルリダ」という動詞について解説があります。名古屋市の地下鉄東山線では韓国語の案内放送をしています。「コルリダ」という音声が聞こえるような気がします。日本語訳は「かかる。(時間がかかる。お金がかかる。病気にかかるなど)」
 アンニョン・ハセヨがこんにちはの口語表現。カムサハムニダが感謝。今度訪問することがあったら使ってみます。

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