2012年06月13日

食堂かたつむり 小川糸

食堂かたつむり 小川糸 ポプラ社

 主人公は、倫子さん25歳、不倫で生まれたこどもだから倫子、りんこ、そして愛称はりんごちゃんで始まる。彼女は言葉を発することができない。
 「食堂かたつむり」というのは、りんごちゃんがひとりで営業する食堂の名称をいいます。そして、お客さまは、1日にひと組限定となっています。りんごちゃんの妹分がエルメスさんで、彼女は豚さんです。
 こういう作品の仕上げ方があったのかと感心しました。食堂を訪れてくるお客さんは、わけありの人たちばかりです。倫子さんは、食をもってお客さまの人生に劇的な変化をもたらし、彼らを幸福に導いていきます。
 倫子さんが、自分を客観的な視点でながめる記述が続きます。記述で、おっぱいとかおしっことか、本質的には女性が好きな世界なのでしょうけれど、漫画の場面を見ているようでもありました。文章が老成しているような部分もありました。されど、読み進むうちにそういったものが徐々に払拭(ふっしょく)されていきます。
 無からの創作なのか、それとも体験なのか、創作だとしたらこの作品は素晴らしい。お客さまに提供するおもてなしの料理で、料理人倫子さんは、カウンセラー・コックさんです。また、読んでいると庭いじりがしたくもなります。
 わたしもこころをからっぽにしたい。人は集まって、やがて散り散りになってゆきます。それが人間界の生業(なりわい)です。
 「感情よりも論理を優先して生きる」とか「気持ちよりも倫理を優先して生活する」。そうしなければ、人間は、心理を高い位置で保った生活ができなくなるというふうに決心させてくれる1冊でした。


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