2012年06月12日

雪女 ラフカディオ・ハーン


雪女 ラフカディオ・ハーン 脇明子訳 岩波少年文庫

 冬になり、「雪女」って、どんな話だっただろうか? と思い立ち読んでみました。読み始めてから、読んだことがあると思い出しました。読んだことも忘れてしまう初老期にさしかかっています。
 「雪女」以外の短編がたくさん収められた文庫です。以前別の本で「耳なし芳一」などを読んだことがあるのを思い出したので、この本ではそれらの短編読みを省略して、「雪女」、それから作者の随筆部分を読みました。
 ラフカディオ・ハーン、日本国籍取得をして小泉八雲となる。アイルランド人の父親とギリシャ人の母親の間に生まれる。1850年に生まれて、1890年に来日したときが40歳です。1890年頃の日本は、大日本国憲法が公布され、第1回衆議院議員選挙が実施されています。1904年、日露戦争が始まった年に54歳で亡くなっています。島根県松江市や熊本県で英語教師をされています。日本人の生活習慣や文化、風景に愛着をもっておられた方という印象を得ました。
続けて、彼のエッセイ部分の感想です。当時の日本人の暮らしが書かれていて興味深い。人力車のことを「クルマ」と書き表す。街の風景は、英語表記と日本語表記のサイン(看板)が混在している。(これは、先日見た映画ラスト・サムライの映像とも共通します)、新しいものと旧い(ふるい)ものが共存している世界です。リズム感のある盆踊りを始めとして、日本人にとっては当たり前の光景でも外国人であるラフカディオ・ハーンにとっては新鮮に感じるものでした。
 さて「雪女」の感想です。昔話では、「鶴の恩返し」を始めとして、女性が男性に秘密を口外しないよう迫ります。でも、男性は約束を守れないのです。武蔵国のきこりである老人茂作と18歳巳之吉(みのきち)が山で迷い、その夜に泊まった小屋に雪女が現れるのです。老人は凍死させられますが、巳之吉は、雪女に会ったことを一生秘密にするという条件付で解放されるのです。
 じっくり考えると、これは女性の性(さが、性質)を表しています。たとえば、今つきあっている女性がいたとしても、男性は女性に女性の男性遍歴の過去を聞いてはいけないのです。うつむきがちに「わたしの過去を知りたい?」と言われると怖い。案外、以前、同棲経験があったり、妊娠したことがあったり、はたまたこどもがいたりもするのです。知らないなら知らない方がしあわせなときもあります。人間界には、だれにも言えない秘密を墓までもっていくという言葉もあります。

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