2012年06月10日

町長選挙 奥田英郎

町長選挙 奥田英郎(おくだひでお) 文春文庫

 神経科医伊良部ドクターが登場するシリーズのうちのひとつです。一話60ページペースで書かれている短編4本です。
「オーナー」ジャイアンツの実在するオーナーを架空の氏名に変えて書いてあります。読み始めにこの作品は消耗品であると嫌悪しました。その瞬間だけ通用する読み物です。おもしろおかしく書いて、雑誌が売れればいい。そう受け取りました。語り継がれる名作にはなりえない。
伊良部ドクターは、不潔で、外見や素行、言動が幼児という人物像で完成されています。最初は彼に好感をもてませんが、小説に出てくる病院の患者さんたち同様、読者も彼の出番が楽しみになってきます。絶品です。
マスコミ攻撃や老害、サポートしてくれる人間がいないと権力者は権力者でいられない。そこまで、書いていいのかと心配もします。作者が自分の意思で書いているというよりも、筆が書かせている。読み終えてみれば、本作品は、後世に残る名作です。
「アンポンマン」こちらもまた実在の人物を架空人物に変えてありますが、その人物の名前を思い出せない。わたしもまた老害域へ向かっている認知症予備軍です。グッチーとか、オグリキャップとか、ブーマンとか並べてみるけれど、思いつかない。野球チームやラジオ局を買収しようとした人。(読みながら15分が経過)思いだした。ホリエモンで、会社名は、ライブドアだ。アンポンマンは、そのとき32才。わたしはその年齢のとき、乳幼児たちをかかえておろおろと暮らしていた。
「カリスマ稼業」この作品の主人公のモデルはわかりません。40代女優。老化に抵抗している。美しくとはいわないまでも、汚く老化はしたくない。患者さんの名前は白木カオルさんです。
「町長選挙」モデルは鹿児島県の離島ではなかろうか。激しい両陣営の選挙戦に伊良部ドクターが巻き込まれるというよりも、ドクターが島民の争いを牛耳(ぎゅうじ)っています。作者の発想には感服します。どうやって争いを解決していくのだろうかと、読者は読みながら壁に突き当たります。そして、「良心」は、この世に存在しないという否定からはじまって、最後はやっぱり存在するのだという肯定にゆきつくのです。


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