2012年06月10日

日本人と中国人 陳舜臣


日本人と中国人 陳舜臣(ちんしゅんしん) 集英社文庫

 「日本人は永遠に中国人を理解できない」孔健著を読んだあとにこの本を読み始めました。作者の陳舜臣さんはたしか推理作家だったと思うのです。高校生の頃読んだ雑誌にそう紹介されていた記憶があります。
 孔健さん同様に日本人に対する批評・批判の記述になります。第一に、日本人は経過を積まなかった民族というものです。中国人はなにもないところから試行錯誤を繰り返して苦労しながら書物を生み出した。日本人はその頃、縄文時代で書物がなかった。日本人が悩んだときには、答として中国から伝わってきた書物があった。苦労の経過を経験せずに結論にゆきつくことができた。日本人は中国の物まねをして、明治時代以降はヨーロッパ、戦後はアメリカの物まねをしてきた。そして、損得勘定が行動の基本で、戦時中戦ったアメリカ合衆国に負けると、手のひらを返したようにアメリカの言いなりになる変わり身の速さがあった。この本が書かれてから30年以上が経ちます。現在は中国側がコピー天国となっています。お互いに真似をしあいながら進歩していくのが歴史であります。
 豊臣秀吉の時代のこととして、日本軍の戦略の優れた部分が記述してあります。少数で多数を倒すことができる。旗と笛や扇で指示が出る。チームワークが整っている。中国の古書に書かれた当時の中国対日本戦の様子はたいへん興味深い。作者の観察として、日本人の一糸(いっし)乱れぬ動きは、「血(血統)」にこだわることからきている。中国人は血筋にこだわらず実力主義、逆に他の血を入れることにこだわるそうです。
 30年以上前の本ですが、その当時のこととして、日本人は、酒に弱いくせに大酒を飲んで公式の場でも下品な話をするという軽蔑と批判があります。前回読んだ孔健さんの記述でも、酒癖が悪い日本人について書いてありました。一気飲みをする、女性の体を触る、女自慢をする。どうも、そういうことをするのは国際社会のなかで日本人だけのようです。恥ずかしいことです。作者たちは、そういうすることをするのが会社のリーダーや幹部たちなので、日本の会社や国は大丈夫なのだろうかと不信感をもたれています。今はずいぶんよくなりましたが、確かに以前はひどかった。セクハラ、パワハラだらけ、傍若無人なふるまいをする人たちが権力を握っていました。
 どういうわけか、この本の後半は、作者がうつ状態になったような記述となっています。気弱です。
 内容としては、島国日本で暮らす日本人の国際社会での視野や考えの狭さが伝わってきます。

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