2012年06月10日

謎解きはディナーのあとで 東川篤哉


謎解きはディナーのあとで 東川篤哉(ひがしかわとくや) 小学館

 短編ミステリーが6本収録されています。1本は約40ページで、20分ぐらいで読み終えることができます。その点で、本屋さんが忙しい現代人に売りたい本なのでしょう。
 短文に情報がいっぱい詰まっていることが特徴です。濃度の濃い作品群です。注意深く読むこと、読んだ小さな部分を記憶しておくことが、最後の謎解きで爽快感を得る秘訣です。
 こちら葛飾区亀有公園前派出所のようでもあるし、名探偵コナンのようでもある。漫画の原作本のようでもあります。宝生グループ総帥のひとり娘で大金持ちの宝生麗子(ほうしょうれいこ)刑事は、こち亀の秋本麗子警察官と中川圭一警察官のミックスのようでもある。謎を解く宝生麗子の執事影山が江戸川コナン(工藤新一)で、風祭警部は、私立探偵毛利小五郎で、それらの点で、人物配置は、独自性が薄い。
 舞台は東京都多摩地区、国分寺市とありますが、土地勘のない人には、比較的裕福な人たちが住む静かな住宅地という印象を受けます。犯人となる対象者は基本的にお金持ちの人たちです。
 物語の展開はワンパターンとなります。殺人発生ー風祭警部と宝生麗子のやりとりー執事影山の謎解き。わたしは第四話「花嫁は密室の中でございます」が6本のなかで一番気に入りました。最後まで犯人隠匿の手法がわかりませんでした。わかったとき、ほーっとうなりました。
 本の帯にはユーモアとか、抱腹絶倒とか書いてありますが、それほどまでの笑いはこみ上げてきません。宝生麗子と風祭警部の金持ち比べ、リムジンとジャガーとか、執事影山が宝生麗子を見下す(みくだす)シーンが出てきますが笑う気にはなりません。また、後世に語り継がれる物語でもありません。娯楽作品です。常日頃のうっぷんをはらすための一助となる本です。

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