2012年06月09日

謎の1セント硬貨 向井万起男

謎の1セント硬貨 向井万起男 講談社

 読んでよかった本になりました。作者の奥さんは宇宙飛行士の向井千秋さんです。前回は、同作者の「君についていこう」を楽しみました。189ページに作者自身が語っているとおり、作者の風貌はテロリストに見えます。おかっぱ頭に髭面(ひげずら)で、どうして向井千秋さんはこんな風貌の男性と結婚したのだろうかと疑問をもちます。
 電子メールの照会やりとりが、この本の骨格をなしています。作者は疑問があるとインターネットでホームページを見て、照会のメールを出すのです。相手はアメリカ合衆国のあらゆる組織や団体、機関などです。この本は、同国の旅行案内の面もあります。ガイドブックにはけして掲載されていないマニアックな事柄が多い。内容は、読まなくても済むことですが、読んでもムダにはならない事柄です。冒頭にある航空機内で、シャンパンをかけてペニー硬貨を探し出す内容はGoodでした。54ページのトヨタに関する合衆国旗掲揚のお話は、トヨタ叩きのときを思い出すと泣けてきます。作者の好奇心を解(と)こうとする執着心はものすごい。戦時中の日本人収容所の記事を読みながら、アメリカ人の攻撃から日本人を守るために日本人を収容したのではないかと推測しました。シャワーの取り付け方を読みながら、他の本で、日本人は自分の顔を洗うときに両手を動かす。でもロシア人だったか、中国人は、顔のほうを動かすとあったことを思い出しました。ホームラン王ハンク・アーロンの記述で、黒人男性若者と千秋さんのやりとりには胸が熱くなりました。122ページのアメリカの高速道路の記事もよかった。無料でどこからでも出入り可能、道路沿いにレストランやガソリンスタンドが発達している。されど、治安は悪い。なかなか面白くて、この本の内容を家族や知人に話していると自分が作者と知り合いのような気分になれます。181ページを読んで、オバマ大統領の「Yes,we can!」の起源はここにあると確信しました。それは、トイレの落書きのお話です。日本人は時間にこだわりすぎる民族であることもわかります。アメリカ合衆国は人種のるつぼで、いろいろな民族が寄せ集まった国であることがわかります。
 エピログーでは、国や組織や会社にも人間と同じように人生があると気づかせてくれました。日本は団塊の世代の老齢化とともに国自体も老齢化に向かっています。ゆっくりと経済力を失っていく反面、人口が減少して、いずれは、たくさんの人が一戸建ての家に住めるようになると思います。今や、戸建ての家は、空き家や年寄り夫婦、あるいは年寄りのひとり暮らしが多くなりました。

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