2012年06月08日

働くインド人!! 流水りんこ


働くインド人!! 流水りんこ(ながみりんこ) 朝日新聞出版

 日本人妻(漫画家)によるインド人夫の伝記です。なかなかいい本です。先日アップルの創始者スティーブ・ジョブズ氏の伝記を3週間かけて読みました。暗い内容で読んでいる間はうつ的状態に陥りました。このインドの漫画は1週間かけてゆっくり読みました。ほんわか気分になれました。漫画というよりもエッセイ(随筆)を読んでいるようでした。
 10年ぐらい前、インドに仕事で在留した日本人男性の本に爆笑したことがあります。インド人の時間あるいは期限、期間感覚のなさは心の広さからくるものと解釈しました。極めて面白いのは、ゆったりのんびりのインド人気質だった旦那さんであるサッシーさんが、日本で暮らすうちに日本人化してきて、早朝から深夜まで働きどおしになり、ついには体を壊して倒れてしまうのです。仕事中毒です。最終的にご自分のお店をもたれるのですが、小さくて地味だけどお客さんとおしゃべりができるおいしいお店という基準に賛同しました。無理して働けるのは体力がある若いうちだけです。
 数十年間の記録となっています。いわゆる半生です。サッシーさんは、面接をされる側から面接をする側に立場が変化しました。インドに対する先入観があります。都市部は発達・発展している。田舎は生活様式が遅れている。仕事はおおぜいで分け合う。だから賃金は安い。仕事が少ないからなるべくゆっくり仕事をする。納期までに仕事は終わらない。一般的にいって「働かないインド人」ですからこの漫画はそうではないことを強調するために「働くインド人」というタイトルにしてあるのでしょう。
 国際結婚とか飲食店の開店とかのノウハウ本でもあります。伝記であり、実用書でもあります。漫画の絵はつくりこんであります。よく出てくる言葉が「曲がりくねった道(ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード)というもので、この漫画を支える1本の筋となっています。インド人夫の日本に対する第一印象は「お金持ちの国、日本」というものです。東南アジアの人たちはみなそう思っているのでしょう。逆にいえば「お金だけの国」という印象もあるのでしょう。
 どこでどうしてインド人と出会って結婚までに至るのかが読み始めの興味です。見たことがない漫画のパターンです。ふたりにとって居心地のよい居場所探しの物語でもあります。地元に密着したあたたかい人間関係に包まれて商売をして暮らしたいという気持ちが伝わってきます。不動産探しも結婚も「縁(えん)」のものです。作者のお母さんも含めて、二人三脚の姿に好感をもちました。
 インドでは長男ではなく末っ子が家を継ぐという記事がありました。日本も実情は同様でしょう。きょうだいの上のほうから実家を出てゆきます。残された末子は実家を出てゆけなくなります。最初はカレー専門店の宣伝漫画かと思いましたが違っていました。

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