2012年06月08日

文通 吉村達也 角川ホラー文庫

文通 吉村達也 角川ホラー文庫

 この本を読むと文通をしたくなくなります。ただ、そもそも、いまどき文通はしないのでしょう。平成6年の作品です。その後、電子メールや携帯電話がゆきわたりました。昭和の遺物のような作品ですが、よくできたホラー(怖いお話)となっています。
 高校2年生16才片桐瑞穂さんがペンフレンドを求めて雑誌に氏名等の個人情報を掲載します。そんな彼女に殺人鬼が近づくのです。片桐瑞穂さんは、殺人鬼の嘘に気づけません。
 片桐瑞穂さんの性格は、優柔不断というどっちつかず、八方美人という周囲からはいい人と思われたい願望があります。そういう人は多い。その性格がラストシーンに反映されます。自分で自分を守るために牙をむく強さがほしいと思いつつも、加害者も被害者も多面性ありで、その点で、人間の悪と善を描いた推理小説となっています。
 最終ページは319ページです。274ページ付近で、作者はこの物語をどんなハッピーエンドにもっていくのか、楽しみでしたが、最後にがっくりきました。この結末でいいのだろうか。人間の悩みは途切れることはないことを暗示しているのでしょう。
 付け加えるとすると、このあと片桐瑞穂が変化して、犯人の弱みにつけこんで、犯人の全財産を奪うことからはじめ復讐を成就するという内容にすると人間の怖さが増幅します。


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