2012年06月06日
螺旋階段のアリス 加納朋子
螺旋階段のアリス(らせんかいだん) 加納朋子 文春文庫
もっと売れてもいい本だと思うのですが難点があります。少年の頃にたぶん読んだことがあるのでしょうが、「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」の内容を知っているという下地が必要です。もう何も覚えていません。読者層が狭くなります。
7つの短編が連なり1編の長編と化しています。同作者の作品にななつの子というものがあったという記憶があります。7にこだわりがあるのでしょう。らせんかいだんのようにぐるぐる回って不思議な読後感が残ります。そういえば、ぐるぐる猿のなんとかという同作者の作品もありました。
「螺旋階段のアリス」私立探偵仁木順平50歳、彼の元へ現れるのが、市村安梨沙(ありさ)自称20歳。アリスがアリサになります。最後のオチはさすがでした。プロの作家さんです。
「裏窓のアリス」奥さんからの依頼。浮気をしていない自分自身を調査してほしい。浮気はしていないけれど別のことをしている。
「中庭のアリス」紫色した髪をもつおばあさんと彼女の愛犬のお話。愛犬がどこかに行っちゃったというお話です。
「地下室のアリス」地下にある倉庫(書庫)にはだれもいない。だれも入ることができない部屋です。でも倉庫内の電話は鳴るのです。だれが電話をかけているのか。
「最上階のアリス」市村安梨沙さんは、魅力的な女性です。その要因は容貌と秘密です。この物語では妻が夫に何度もおつかいをさせます。こわいお話でした。
「子供部屋のアリス」仁木所長の妻はどんな人なのか。ここまで、そのことを気にしながら読み続けてきました。妻は売れっ子シナリオライターです。
「アリスのいない部屋」シャイで、細い、控えめでやさしい。そんな女性が登場します。そんな女性にわたしは今まで会ったことがありません。家の外でそんな態度の女性が、家の中でもそうあったためしがありません。読みながら、うさぎがぴょんぴょん飛び跳ねる光景が見えました。この本は手品です。
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