2012年06月04日
パパは楽しい躁うつ病 北杜夫・斎藤由香
パパは楽しい躁うつ病 北杜夫(もりお)・斎藤由香 朝日新聞出版
どくとるマンボウシリーズは、高校生の頃の愛読書でした。「どくとるマンボウ航海記」は、わたしが家を出るきっかけのひとつになった本でもあります。「楡家の人々(にれけ)」は精神病院を舞台にしたものでした。作者が医者であることは高校生のときに知っていたのですが、作者自身も精神病であることは大人になってから知りました。
この本を読んで、作者にあこがれていた自分の若い頃をふりかえりつつ、ちょっとがっかりしました。作者の病的な行動にはついていけません。奥さんも娘さんもよくがまんされました。家の外で愛想のいい男子は、家の中では暴君です。そういう人を何人か見てきました。作者の躁うつ状態と一緒で、人間の人格とか性格は、結局プラスマイナスゼロなのです。
父と娘の対談集です。家族固有の思い出であり、出版化に首をかしげる点もなきにしもあらずです。今さらどうすることもできない過去の話です。51ページに東京大空襲で死体のピラミッドを見たとか、それをつくったという人のお話は貴重な戦争体験です。
作者以外の有名作家の個性とか性格もでてくるのですが、作家になる方はやはり常人ではないようです。作者の躁(そう)状態は凄惨(せいさん)です。マブゼ共和国をつくったあたりのお話は、奥さんと娘さんの「受容」を考えました。もしかしたらご家族全員が、世の中の普通の家庭の普通の暮らしをご存じないのかもしれません。「受容」と「諦め(あきらめ)」がいったりきたりしたのでしょう。
作家になる条件としては「メモ魔」であることが必要なようです。そして、手紙を書くことが好き。後半にうつ病にならないためのコツが書いてありました。「自分をみつめない」ことです。
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