2012年06月03日

ロック母 角田光代

ロック母 角田光代 講談社文庫

 7編の短編が収録されています。作者の創作歴史です。年齢は作者のものです。
「ゆうべの神様 92年11月発表 25歳」出だしはいつものようにどぎつい。人を殺したい願望から始まります。この本を読んだら次は京極夏彦著「死ねばいいのに」を読む予定です。ふたつの小説をつなげてこの世にない第三の本を空想できるだろうか。さて、この短編の感想です。作者はとてつもない能力をもった人です。だから読むのにもエネルギーがいります。たいへん疲れます。読み手は、夫婦喧嘩では主人公の母親であるさえさんの味方になります。読み手の口からエイエイオー!!と雄叫び(おたけび)が出ます。家庭内暴力、虐待の環境にある主人公は日々を送りながら、周囲の人たちは成長とともに変化していくのに、自分は取り残される疎外感にさいなまれます。作者の心にある苦しみが作品の奥から見えてきて、読み手はせつなくなります。
「緑の鼠(ねずみ)の糞(ふん) 98年4月発表 31歳」タイ国バンコクでの旅する男と女の出会いです。その場限りのつきあいです。薬師丸ひろ子さんの歌にあった、ふたりでいてもひとりは消えない、孤独をたしても愛にはならないというフレーズを思い出しました。
「爆竹夜 98年11月発表 31歳」中国上海のお話です。同著者「いつも旅のなか」という本を読んだことがあります。創作の根っこに旅があります。この短編で作者は上海を酷評するのですが、読み手からみれば、作者は素敵な場所にいます。
「カノジョ 02年1月発表 34歳」結婚した相手の生きている前妻の悪霊が家に棲(す)みついているというお話です。祈祷師は、わたしが子どもの頃に確かにいました。祈祷の場面も何度か体験しました。一般家庭の普通の行為でした。すっかり忘れていました。悪霊である前妻カノジョの名前は畠田みよ子さん39歳です。カノジョが後妻にのりうつる。理解することはむずかしいのですが、ゾクゾクする感覚があります。
「ロック母 05年12月発表 38歳」発表した雑誌は「群像」です。作家を目指すような人たちが読む本です。他に「文学界」があります。10代後半の頃に読んでいました。今は読みません。同著者の「八日目の蝉(せみ)」とか、同じく「予定日はジミー・ペイジ」の源がこの短編にあります。母から娘、娘から孫へとつながる愛情を伝える力作です。
「父のボール 06年10月発表 39歳」作者はふたりいます。もうひとりの作者が小説家です。そう思わせてくれる短編でした。駅で老女を刺殺した精神病の若い女性がいたというニュースを聞いたことを思い出しました。作者は若い頃、なにかを憎んでいた。この短編では父親ですが、父親ではないなにかを憎んでいた。ここまで空間を凝縮させなければならないほど、作者は心理的に追い込まれていた。
「イリの結婚式 07年1月発表 39歳」中国ウイグル自治区を旅している女性です。案内人たちの不仲を見ながら婚約破棄した自分の過去を思い出すのです。婚約破棄の理由はハムスターの飼育です。わたしもハムスターを飼っていた頃を思い出しました。ジャンガリアンという種類でした。この短編ではゴールデンハムスターとなっています。ハムスターが死ぬと飼い主は深いうつ状態になります。わたしもそうでした。前作、父のボールに似た作品です。気になるささいなことで、主人公の女性は災難をよけることができました。


この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t79532
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい