2012年06月01日

終末のフール 伊坂幸太郎

終末のフール 伊坂幸太郎 集英社文庫

 最終ページ付近では、宮城県仙台市郊外ヒルズタウンにある集合住宅のベランダで複数の家族が夕日をながめます。地球に小惑星が衝突して大洪水が襲ってくるという設定です。東日本大震災の津波襲来と重なります。未来を予測した小説となっています。2006年の刊行です。
 8編の短編です。互いに関連付けがしてあります。世界は8年の寿命として第一話がスタートします。惑星衝突が確実となった時点で治安は悪化します。暴動、略奪による殺人、社会の秩序は機能を失います。騒ぎのピークを過ぎて世の中は落ち着きます。人類はじたばたしても運命は変えられないとあきらめたのです。死を覚悟して淡々と日常生活が継続されるようになります。
 心に残ったのは、障害のこどもをかかえる夫婦の言葉でした。3人一緒に死ねることが幸福ですと語ります。こどもよりも親のほうが先に死ぬ。障害のこどもひとりを残して死んでゆくことが日々の苦痛でしたとあります。
 文章の扱いはうまい。構成は実験的要素が含まれていることを感じます。ストーリー展開は、危機のなかにあっても日常は淡々と過ぎてゆきながら、家族や友人、仲間のことを考えるものとなっており共感します。読み手は、いつになるかわからないけれど、いつかは地球にこういう時がくると予測します。
 人間の「良心」を問う物語でもあります。どのような悪条件のもとにあっても、すさまない心をもつ。とある若い女性はみっつの約束を自分に課します。悲観してふたりで自殺した両親を怨まない(うらまない)。亡父の膨大な蔵書を全部読む。そして最後に「死なない」。何があろうと、自分は自分の望む人生を生きぬくという強い決意があります。


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