2012年05月31日

だめだこりゃ いかりや長介

だめだこりゃ いかりや長介 新潮文庫

 身近に昔話をしてくれるお年寄りがいなくなってから久しい。筆者は亡くなっています。書中に掲載されている白黒写真に写っている芸能人たちのうちの何人かは故人ですし、十代のアイドルだった女子たちは、50歳前後のもういい歳(とし)に達しています。みなさん苦労されたことと察します。しみじみしました。人は泣いても笑っても必ず死にます。
 エッセイの舞台について考えてみる。東京浅草・上野かいわいからお話はスタートします。同時期に伊集院静著「いねむり先生」を読んでいました。時代の前後はあるけれど、同じ場所を2冊の本に出てくる人たちが交差します。そんな空想をするだけで楽しい。それから「錨(いかり)を上げよ」百田尚樹著も読んでいました。「いかり」と「錨(いかり)」が重なった。加えて2冊の本に共通する一節が書かれていました。「もはや戦後ではない」です。そのようなめぐり会いが大好きです。自分は波に乗っている。自分の人生の流れに間違いはないと安心します。
 ドリフターズはジャズバンドから始まっているのですが、前提として、音楽は四流という著者の自己嫌悪があります。コントも一流とは思っておられません。著者の文章は常に謙虚です。なん流ということは別にして、毎週土曜日生放送の番組が16年間続いたことは事実であり偉業です。時代の潮目がきたのです。ひょうきん族へと移行しながら日本は「平成」の時代になりました。
 音楽演奏能力が低くても、歌がへたくそでもバンドとかアイドルで売れるのはなぜだろう。魅力と能力は比例しないときもある。
 別のメンバーが本を書くとまた別方向からのドリフターズが見えてきます。以前「変なおじさん」志村けん著を読みました。教頭の息子として生まれて、同棲してこどもができて堕胎させてと読み継ぎ、ほろりときました。人生の大半を終えると、こんなはずじゃなかったと思うことが多い。でも、済んだことを変えることはできない。
 印象に残った部分を紹介しておきます。27ページ、初任給が1000円。洋画を見ることが趣味。アボットとコステロの映画が好きだった。先日観たDVD「レインマン」でもこのふたりのギャグが多用されていました。136ページ付近、たいして何もできないブーちゃんを大切な存在と扱うくだり。156ページ、注さんが、仕事だけのために人生はあるのではないという趣旨の発言をするくだり。著者は倒れるまで仕事を続けるタイプです。同じ人でも、人生の時期によって、意識が異なることもあるでしょう。
 後半にアフリカ旅行について少し記述があります。日本人で同地の旅行経験がある人は少ないでしょう。一生行くことのない遠い地です。文章を読む限りでは、灼熱の夏が続くのではなく、人々は1700mぐらいの高地で暮らし、気候は温暖、保養地、避暑地という感じであり、ジャングル大帝の世界がすべてではないようです。
 最後に、ドリフターズとスマップは同類項のグループという著者の分析に、スマップとはコントもできる音楽グループという領域に入るのかと意外でした。


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