2012年05月30日

ガンジス河でバタフライ たかのてるこ

ガンジス河でバタフライ たかのてるこ 幻灯舎文庫

 タイとインドでの女ひとりの旅行記です。1992年2月、作者21歳のときで、今から20年前になります。
 彼女の行動には無茶が伴い、そういう点で、外国人のパワフルな姿と重なる。以前、日光で見た、バスを手で制して止めた南米人男性を思い出します。
 何のために、そのような苦難を味わう旅のしかたをしなければならないのか。同じく海外旅行好きであった彼女の兄の影響が大きいのでしょう。
 181ページから183ページの記述はいい。日本では首を横に振ると「いいえ」の意思表示だが、インドでは「はい」の意思表示になる。
 旅は人を成長させてくれる。駅で夜を明かす彼女は、裸の大将山下清画伯のようです。しかもインドの駅です。わたしなら怖くて一睡もできません。296ページ、ガンジス河でバタフライをしながら河の中央へ行くと、とても怖いものに当たってしまう。(何かは秘密です。)距離感と時間の感覚が、江戸時代の日本のようです。
 前半はああでもない、こうでもないという繰り返しの記述と、自己陶酔的記述が読みにくい。(女性の読者には好まれるかもしれません。)後半になるにつれて、無駄な部分がなくなり、作者の心情がくっきりと描き出されてきます。いい文章です。205ページの景色は、おそらく奈良時代の平城京にもあった景色だと思う。

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