無菌病棟より愛をこめて 加納朋子 文藝春秋

 創作だと思っていました。作者自身の現実でした。驚きました。白血病です。わたしの50年ちょっとの人生でかかわりあいになった白血病にかかった知人数人はすべて亡くなりました。作者の罹患(りかん)はショックです。これまでに読んだ作者の小説は「ささらさや」、「ななつのこ」、「ガラスの麒麟」、「少年少女飛行倶楽部」、「掌の中の小鳥」、「ぐるぐる猿と歌う鳥」など多数にわたります。
 長い人生、たいていの人は一度は長期入院生活を人生のどこかの部分で体験することになります。わたしも20代で内臓を壊し3か月ほどの入院生活とその後も3年ぐらい通院生活が続きました。入院体験があることで、この本に書いてあることへの共感度が高くなることでしょう。本には書けなかった悲惨なこともあったでしょう。
 作者が亡くなればこの本が遺作になります。書中で自身の声としてこの本を遺作にしたくないという強い意思表示があります。生きたいのです。
 作者の体験は次の経過をたどります。治療薬の副作用で、髪が抜けて丸坊主になる。爪がもろくなる。口内炎がひどい。吐き気が続き食べて吐くの繰り返しで体重が減少する。高熱が続く。味覚がなくなる。読みながら健康であることのしあわせを噛み締めました。
 親族から骨髄移植を受けたものの完治したわけではなく治療は続きます。この本は、同病の方にとっては希望の星です。
 きょうだいを始めとした親族の援助があります。自宅で過ごせることのしあわせがあります。ただの貧血だと思っていたら深刻な病気だった。だれしも白血病でなくても癌になる可能性はあります。本のはじめ付近にある。「期待しない」は自分への厳しい慰めです。書くことで悩みを消滅させる。からだの具合が悪いときはたくさんの文章量です。書中では45歳で終わっています。こどもさんがあるので、もうおばあさんと呼ばれることはないかもしれないという悲観があります。
 細菌に感染すると抵抗力がないから「無菌室」なる部屋の中で生活する。血液の役割に関する記事が続きます。数値が500ぐらいないと困るもののが、0になります。恐怖です。自分だったら苦痛を味あわずに楽に死なせて欲しいとまで思うでしょう。最初にある治療として首に15cmの管を埋め込むというのはかなりヘビーです。
 自分がどうこう考えると怖いので、家族が、たとえば妻が、娘や息子が発病したらという気持ちで読み続けました。

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愛してくれる人たちがいるから、死なないように頑張ろう。―急性白血病の告知を受け、仕事の予定も、妻・母としての役割も、すべてを放り出しての突然の入院、抗癌剤治療の開始。辛い...
「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子【粋な提案】at 2017年06月27日 07:54
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