2012年05月28日

そして誰もいなくなった アガサ・クリスティ


そして誰もいなくなった アガサ・クリスティ 清水俊二訳 ハヤカワ文庫

 読んでよかった本になりました。今さらですが、今まで、読んだことがありませんでした。
 この本から派生して生まれた物語をいくつか思いつきます。わたしの読書歴からいうと、「インシテミル」米澤穂信著、孤島でボートが来ないことから、「東京島」桐野夏生(なつお、女性)著、手術台上の殺人から「チーム・バチスタの栄光」海堂尊著、「死神の精度」にあった小品「吹雪の死神」伊坂幸太郎著があります。
 10人の人物が登場します。全員が死亡するところまでは、読む前から知っていました。最後にトリックが判明する部分は素晴らしい。やはり、猪突猛進よりも押したり引いたりが交渉の秘訣と再確認したのでした。以下読書感想の経過です。
 本にボールペンでたくさん書き込みをしてしまいました。外人名であること、職業の区別がよくわからないこと(とくに将軍と大尉)、50ページ部分に付箋(ふせん)を貼り(このページにある詩のとおりに殺人が進んでいく)、66ページに付箋を貼り(登場人物個々の罪が示される)ページの行ったり来たりを繰り返しながら最後のページまでたどりつきました。
 物語の構成がしっかりしています。各人の登場、出会い、事件の勃発(ぼっぱつ)、各人の事情説明とつながっていきます。理路整然として、数学的です。そして、基本は性悪説です。だれもが過去に嘘をついており、今も嘘をついています。
 犯人は誰で、動機はなんなのかがなかなかわかりません。それが「秘密」となって、読む意欲をかきたててくれます。どうして、きっかけとなったレコードの音声を何度も聞かないのか、10人のなかの誰と誰が犯人らしきオーエン夫妻なのか、わたしは、ローレンス元判事とエミリー老婦人(信仰家)を疑いました。ロンバート元大尉は、崖にピストルを隠したのではないか、動機は復讐ではないか、死体が見つからないアームストロングDr.が犯人ではないか。疑いはどんどん広がり、偽名を使っている人物もすぐ気づきました。消えたピストル、その後見つかったピストルには弾(たま)が装てんされていないのではないか。創造力と第六感が冴(さ)えてきます。
 そして種明かしです。表面には出ない人間の心の汚さが表現されています。殺人がからまなくても人間界では毎日繰り返されている営みでもあります。この本のタイトルのように、いつの日にか、地球上には誰もいなくなるのでしょう。そういえばそんな映画があった。


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