2012年05月27日

十歳のきみへ 日野原重明


十歳のきみへ 日野原重明 冨山房インターナショナル

10歳のこどもさんに向けて書いてあります。10歳のこどもには難しいのではないかと読み始めましたが、読み進むにつれて大丈夫だという考えに変わりました。寿命は与えられた「時間」という器で、自分がその器を埋めていくという理屈はわかりやすいものです。95歳という年齢がすごすぎて何も反論できません。よく読めば、普通の人権感覚をもっておられる方です。人間が生き続けていくためには、挫折の時期が必要とかピンチのときこそチャンスというのは、年齢を重ねてふりかることによって誰しもが気づかされることです。作者のメッセージは、失意にある10歳のこどもたちへの励ましです。作者自身もまた、周囲の人たちによって支えられてきた人です。残念ながら、こどもたちが、「うれしい、ほこらしい、きはずかしい」という感情をもつ回数が少なくなってきています。生活環境が昔とは一変しました。
作者の努力によって、成人病が生活習慣病と名称が変わり、音楽療法が認められるようになったことは興味深い。作者には激しさと頑固さがあります。封建的な考えに対抗していく姿には説得力があります。
経済困窮話では、「がばいばあちゃん」島田洋七著を思い出しました。作者から「慈しみ(いつくしみ)と優しさ」が伝わってきます。後半は神父のお言葉をいただいているようでした。
平和な世界をつくるために相手を「許す」という行為はとてもむつかしい。よくいえば、自分のことでせいいっぱい、悪く言えば無関心な日本人が蔓延(まんえん)しています。そばで事件や事故が発生して、人が倒れていても関係者以外は知らぬ顔で自分のやることをやる、あるいは、そこにその病人やけが人は存在すらしていないという扱いをする。日本人の性質は変わりました。
作者はシュヴァイツアー博士の影響を受けました。こどもはだれかの影響を受けてそのだれかのような大人になっていきます。だれをお手本にするのかは、出会いできまっていくのでしょう。

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