2012年05月26日

阪急電車 有川浩

阪急電車 有川浩(ひろ 女性) 幻冬舎文庫

 ときおり書店や書評でこの作品を見かけることがありましたが、手にとることはありませんでした。阪急電車には、乗車したことがあると思うのですが、身近ではありません。また、車で移動するようになってからは、鉄道を利用することが少なくなりました。
電車通勤の苦痛は覚えています。さまざまなわずらわしい乗客がいてストレスのもとになっていました。ところが、この物語は痛快です。でも、最終的には、この物語は現実には起こらない「夢」です。だけど、「夢」だからいいのです。読んで良かった1冊になりました。お勧めします。読んで後悔しません。
鉄道駅を巡るお話ですので、わたしが読みながら感じたことを駅を回るように順番に巡ってみます。
 征志さん、27歳ぐらい。宝塚中央図書館へ行きます。文章は読みやすくてわかりやすい。上手です。最初の章はわずか11ページで終わってしまいました。1話完結なのか、連作なのか気になります。11ページの短さが、とてもいい。
 宝塚ホテルから出てきたのが翔子さん27歳ぐらい。前章とつながりました。上手(うま)い。人間、引き際が大切です。ひと駅ごとが章になっています。ひと駅ごと読み終えるたびに次の章を読む楽しみが湧いてきます。ミサとカツヤのカップルは不均衡です。知的水準が並んでいない。ミサは、自分を守るために判断と決心をしなければならない。
 ラブロマンスがひと組ずつ順番に登場してきます。小坂圭一くんと美帆さん、同じ大学の学生さんですが、昔聞いたチェリッシュの歌を思い出しました。タイトルは覚えていません。あなたと初めて会ったのは確かお好み焼き屋の2階なのです。好青年と素朴なお嬢さんです。
 「塚口」というところには34年ぐらい前に親族を訪ねて行ったことがあります。まだ10代だった。せつないものがありますが、ここには書きません。
 作者の立場に立ってみる。物語の構成において、選択肢が多岐に渡ります。完成作品以外のパターンもあったでしょう。ミサとカツヤは別れるようで別れないと予想しました。腐れ縁です。ネタバレになるので小説の中の結果はここには書きません。
 読み終えると別の人格になれそうな魔法があります。
 終着駅に着いて、物語は折り返し運転になりました。作者さん、なかなかやるね。その後の展開もなかなか良かった。すべての章に「平和」な雰囲気がただよっていました。

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