2012年05月23日

下流の宴(うたげ) 林真理子

下流の宴(うたげ) 林真理子 毎日新聞社

 現代家族社会を問う問題作です。ことに福原翔の夢のない生き方、されど、社会や家族のなかの自分の位置を正確に把握した生き方、昔ならだらしないで切り捨てられた生き方ですが、これからは多くなるでしょう。一生バイトで気楽に暮らしたい。結婚できたらラッキー。
 地方出身者の苦労を知らない都市の人間、女性が結婚活動でいい男を探してはいけないのかという心に訴える可奈の言動、プー太郎の翔にもあるちいさなプライド、本音の小説でした。
 物語では、いっけん上流家庭と思わせる東京の福原家、対して下流とされる沖縄県の離島に住む宮城家の事情が交互に記述されていきます。ロミオとジュリエット役が、福原翔君と宮城珠緒(たまお)さんです。面白い作品です。
 福原家のメンバーは次のとおりです。
 福原健治 世帯主 52歳 有名企業の部長職 物語の中では傍観者的立場ですが、家族関係の要所は押さえている。助言は正確ですが、結局、父親は頼りないという印象は否めない。
 福原由美子 主婦。この物語の主人公でしょう。48歳 こどもの頃に亡くなった父親は医師。母親の教育もあり、上流人としての意識が高い。いつまでも30年前の知識と経験値で判断することが、老人の害の域に達している。されど、こどもたちの生活設計をはじめとして、なにもかもが思い通りに運ばない。貧富の差の差別意識強し。学歴差別意識も強い。彼女は、暇な人だという感想をもちました。暇だから、あれこれ考える。稼ぐことに追われている人は、手順どおりに勝手に毎日体が動く働くロボットなっています。
 由美子さんは、世間体を気にする母親です。学歴は過去の栄光であり、高学歴でも日常的に勉強していないと学力は低下・退化していきます。そして、学歴とは関係なく、地道に長年継続して働いて、生涯獲得賃金が多かった者が、金銭面での勝ち組のひとりです。
 福原可奈 22歳 いろいろあったが今はお嬢さんが通う大学の学生。自立して自活する気はない。お金持ちのいい男を見つけて主婦におさまり、少しぜいたくな暮らしを送りたい。
 福原翔(しょう)21歳 医師を目指していたが、私立中学を経て私立高校の時点で退学。結局中学卒業の学歴。家を追い出され、新宿歌舞伎町のマンガ喫茶で働く。次に紹介する年上の宮城家の娘珠緒(たまお)と同棲中。
 宮城家のメンバーは複雑なので、簡単に紹介します。
 宮城珠緒 23歳 同棲している福原翔の母親に下流と馬鹿にされて一念発起する。
 宮城家の両親は離婚。離婚した両親の互いが再婚しているので、異父兄弟や異母兄弟あり。兄弟同士が同級生という組合せもあり。
 宮城珠緒さんの「だってもう誰にも文句を言わせない」という言葉が心に残りました。


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