2012年05月21日

イン・ザ・プール 奥田英朗


イン・ザ・プール 奥田英朗(おくだひでお) 文春文庫

 傑作です。同著者が書いた同じ主人公が登場する精神科伊良部ドクターによる「空中ブランコ」よりも水準が高い。短編集になります。
「イン・ザ・プール」作家の仕事は、魅力的な主人公を創造することです。この作家は、病気を扱った記述がうまい。この文庫では、いわゆる中毒症状について事例が集中的に納められており、この短編の場合は、「水泳」中毒となっています。ありそうなことです。結末はあっけなかった。
「勃(た)ちっぱなし」なんという驚くべきタイトルであろうか。内容もなかなかいい。
「コンパニオン」夜、ストーカー、幻覚、幻聴、この部分を駅のプラットホームで読んでいたら、後方のベンチで若い女性がわめきだしました。彼女は精神の病気で、空間に向かって「ついてこないでよ」と大声でわめいていました。作品に戻ると、問答方式がとてもうまい。本音と建前がリズムにのって繰り返される。ケーブルテレビで見た「アメリカン・アイドル」という歌手のオーディション番組を思い出しました。
「フレンズ」ケータイ電話中毒です。階段、エスカレーター、プラットホーム、仕事中、他者との会話中、宴会中でもケータイ電話をいじっている人がいます。心の病気だと感じます。
「いてもたっても」生い立ちも性格も変更することはできないという言葉に共感します。

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