2012年05月20日

スティーブ・ジョブズ Ⅰ・Ⅱ


スティーブ・ジョブズ Ⅰ・Ⅱ ウォールター・アイザックソン 講談社

 Ⅰの176ページまできました。感想を書き始めます。よく売れている本です。文章量は多く、密度も濃い。時間がかかります。伝記です。1980年9月まできました。今読んでいる部分はパソコンにとって、夜明けの時期です。パソコンのアプリケーションソフトとか構造の知識があったほうがいい。知識や分解の体験があるかないかで感想は違ってきます。1975年ガレージ付近で出てくる単語は「集積回路」とか「チップ」です。インターネットは軍事目的で始まったと読んだことがあります。パソコン自身は、軍事ではなく、一般家庭への流通が目的となっています。
 金儲け目的の人がいます。技術開発が目的の人もいます。そんななかにあって、主人公の個性は非凡です。(わたしは主人公を知りません。パソコンの知識もそれほどありません。)裸足で歩く。禅とLSD(薬物)が好き。日本の永平寺とか日本人名も登場します。ベジタリアン(菜食主義)、変則的な生まれと育ち(両親に里子に出され養父母に育てられる)、狂気をあわせもつ天才、主人公は亡くなっています。読み進めることは一歩一歩彼の死に近づくことです。文系と理系の交差点に立っている人間が革命を起こす才能を有している。(本書の場合、抽象的に見えるものを数値化して、計算してゆく過程で「美」にこだわることになります。)第一印象はかわいそうな人でした。周りの人を罵倒する。協力してきた仲間を平然と切り捨てる。(自分が実の親に捨てられたことが要因と解説されています。)行動はパワーに満ちています。
第二印象は、「死んだら終わり。」でした。死は時の経過とともに人の存在を忘却の彼方へ遠ざけてゆく。
 奇人です。奇行もあります。(長期間入浴しない。)義理という言葉はない。人情という言葉もないでしょう。以前読んだ「錨(いかり)をあげよ」百田尚樹著の主人公作田又三と似た性格です。偏(かたよ)っている。おだてる。おどす。現実をねじ曲げる。(書中では「現実歪曲(わいきょく)フィールドという言葉で表現されている。)それでも、高価ではない製品を実現するという業績があります。米国人は知力で生きる。インド人は直感で生きる。知力は習得するもの。時間がかかる。スティーブ氏は直感を重視しました。
 パソコンの功罪について考えてみた。豊かで便利な生活をプレゼントしてくれた。反面、大衆は知恵を失った。職を失った。豊かな人とそうでない人との格差が広がった。
(続く)
 Ⅰをようやく読み終えました。日本人として奇異に感じることがあります。主人公は日本が好きです。日本人よりも日本の仏教(禅)を愛しています。日本文化(清潔、簡素)や生活様式を取り入れています。その状態を維持するために、チームワークと規律を求めています。離別した娘との親交を図るために日本で穴子料理を食べています。京都の庭園も好きです。
 ときおり記述に出てくる相手に対する質問として「処女か、童貞か」の意味はいまのところ理解不能です。今、亡くなろうとしているベッド上の母に対してまで「結婚したときは処女だったか」と問うています。奇怪(きっかい)です。
 408ページで自己愛性人格障害という病名らしきものが付けられています。読みながら思い浮かんだことがあります。主人公と同じタイプの人間をいままで何人か見てきました。こだわる。思い通りにならないと怒鳴る。わめく。カリスマ(超人間として大衆の支持をもつ)、判断や行動が極端から極端へと短時間で変化する。説得に納得しない。わが道をゆく。教祖。集団催眠の術を心得ている。その効果として、すばらしい作品がこの世に生まれます。美は追求され完成に至ります。わたしはいつもそんなとき、だからどうしたと思います。しょせん、人間も物も消耗品です。いつかは消えてなくなります。
 後半の親族にある乱れはすさまじい。金銭欲はあるようでない。30才で億万長者です。残りの30年は何をなすべきか、あるいはなさないべきかで、なさないほうを選択する人のほうが多い。預金利子で死ぬまで生活することが可能です。彼は単純に安価で美しいパーソナルコンピューターを世界中のひとたちに使ってもらうことを人生の目標にしました。莫大な私財を投入します。なかなかできることではありません。
 車のスピード違反では、160kmで走ります。自分は法令に従わなくてもいい特別な人間であるという意識があります。技術を盗むことに罪悪感はありません。(もっとも現実は盗み合いで成り立っています。)人間を賢人とばかの2種類だけに区分する。一般的なものを「ごみ」と言い放つ。大学中退で学歴にはこだわらない。頑固で反抗的でだれとでも衝突する。独裁者。支配欲強し。完璧主義。感情をあらわにする。管理社会の現在、そういうタイプの幹部職員は徐々に減ってきました。日米に共通する現象でしょう。周囲は忍耐を強いられてきました。皆、生活していくためにはしかたがなかった。この本は、企業や組織で企画や立案をする業務に携わる人が読む本です。侍タイプの上役がいると現場は混乱します。調整役をかってでる人も減少しています。現代は、ひとりのリーダーが引っ張るのではなく、グループで相談して物事を決定してゆく手法に変化しています。385ページにいい言葉がありました。「あれはあれでよかった。」主人公は結婚してこどもを3人もうけました。(Ⅱへ続く)
 読み終えることができました。3週間ぐらいかかりました。Ⅱの200ページあたりまでが、主人公の個性描写です。ここまでで、読み終えてもかまわない作品だと感じました。以降は、仔細な項目紹介、最後は家族とのことで、わざわざ一般に公表するまでのことではないと読み飛ばしました。主人公の個性描写は弱まっていきます。
 主人公に対する印象は、「攻撃する人」、「会社人間」、「がんばる人」というものでした。読んでいる途中で何度も思ったことは、<何もかもが終わった>というものでした。自分自身についても同様の感想をもっています。朝、目が覚めた50代なかばの男性には、夢も希望もありません。やるべきことは、やり終えています。やりすぎて、体をこわしています。
 主人公の行動は、硬い石を削る作業です。最終的に美しい彫刻が完成します。この本は企業で働く人たち向けの本です。営業職へのメッセージもあります。手法の種明かしです。どの項目にも執念がにじんでいます。
 製品作りにおいては、「シンプル(単純、素朴)」が目標となっています。ムダの排除にエネルギーが注がれています。ただし、わたしは無駄は無用なものではなく、必要なものだと感じています。無駄の部分で生活している人たちもいます。みんなが食べていく世界です。数パーセントの人口のための手法のみでは世界が成立しません。ビル・ゲイツ氏との対比・対立がときおり出てきます。同氏側の考え方をもつ人間が大勢です。アメリカらしい人物伝です。話し合いを重視して互いの妥協点を見い出し、中途半端で不透明な結論を導き出す日本人の性質とは異なります。絶対君主制の会社経営です。
 主人公は変化という発展を求め続けます。きり(終わり)がありません。この50年間ぐらいで、世の中は急激に変化しました。それ以前の数百年間は変化があってもゆるやかなものでした。正直言ってわたしはもう変化についていけません。疲れました。うつ病の人が増加した原因に機器の急激な変化による生活様式の変化が遠因になっていることは間違いありません。急ぐ人もいれば、急がない人もいます。強引に急がせないでほしい。現状維持は後退であるという企業教育がありました。私生活には取り入れたくない言葉です。
 97年、働きすぎがガン発病の原因と推測されるという記述があります。昔でいうところのモーレツ社員です。そういう働き方を選択する人は減っています。
 220ページに神の存在を信じるという言葉があり意外でした。最終ページでは、半分信じると記載されています。
 以降いくつか、気に留めたことを書いて終わります。
 製作したアニメ作品がいくつか紹介されています。意外でした。今度「カーズ」というのを見てみるつもりです。「バグズライフ」はまだこどもが幼かった頃映画館へ見に行きました。
 75ページ、若いときは、反逆者、やっかい者、クレイジーな人にあこがれる時期がある。主人公はメッセージの発信がうまい。
 何度も出てくる「エンドツーエンド」の意味がとれない。end-to-end 始発駅から終着駅までみたいな意味なのでしょう。最初はエンドが2個あるのかと思いました。
 写真を見ると、若いときとは風貌がすっかり変わり別人のようです。

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