2012年05月19日

さまよう刃 東野圭吾

さまよう刃 東野圭吾 角川文庫

 犯罪被害者家族の叫び声が響いています。16歳のひとり娘を強姦され、覚せい剤を打たれたのちに、ごみのように遺体を川に捨てられた父親の復讐劇です。彼は妻も病死で亡くしています。加害者である少年3人は未成年で、逮捕されても短期間の刑で済む立場にいます。
 主人公父親は長峰重樹さん、40歳ぐらいでしょうか。娘さんの名前が絵摩さん、高校1年生です。少年たちは18歳ぐらいらしく、菅野快児(スガノカイジ)はケダモノです。伴崎(トモザキ)アツヤも同類です。中井誠も人間のくずです。彼らにも親がいます。産むだけ産んで、こどもの言いなりになって、最後はこどもを捨てたり、卑劣なかばいだてをしたりしています。長峰さんはだから、怒りと憎しみでいっぱいになったのです。
 何人もの刑事たちが登場しますが、彼らは物語の進行係を務めるだけです。いまどきらしく、携帯電話が犯罪の鍵を握っていきます。ただ、被害者側にしても加害者側にしても、あまりにも極端なお話ではあります。
 この物語の場合は、長峰さんは犯人の少年たちを殺害したあとに自殺する気配があります。読み続けていると長峰さんに声をかけたくなりました。お疲れでしょう。もうやめましょう。自首しましょう。天国の娘さんも、もうこれ以上の復讐は望んでいません。
 長峰さんの行動に協力する通りすがりともいえるペンション経営者の娘さん丹沢和佳子さんがいます。彼女は正面から長峰さんに説得を試みます。それは、作者自身の姿だと感じました。終わりはハッピーエンドになってほしい。そう思いながら読み続けました。だけど、読み終えてみて、むなしくなりました。

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