2012年05月18日

100万回生きたねこ 佐野洋子

100万回生きたねこ 佐野洋子 講談社

 絵本です。いつものように絵だけを最後まで見て、自分なりにストーリーを考える。生意気(なまいき)そうなドラねこくん登場です。最初のほうにある2枚の風景画は、小学校低学年のこどもが描いたようにへたくそです。意図的にそうしてあるのかもしれません。以降は、こどもとおとなが混じったような絵、そして、プロの絵と、絵が変化していきます。15ページにあるねこの絵はGoodです。続けて絵を追いかけてみます。主役のねこに配偶者ができて、こどもたちができて、配偶者は亡くなります。ねこは大泣きしています。主役はオスねこです。
 最初に戻って、読みながらページをめくりはじめます。100万年も生きたねこです。人間が地球上に登場してから5500年くらいだと思います。ねこは、生きかえってもねこです。ねこの記憶は復活後も継続します。ねこに形容詞はあるけれど、名前はありません。
 権力者が嫌い、海が嫌い、サーカスが嫌い。彼は、束縛されることが嫌いな様子です。対して、ねこを飼う人は孤独です。ひとりぼっちで淋しい立場の人たちです。死んだねこはいつも土の下に埋められる。
最後まで読みました。つらい最後なのか、幸福な最後なのか、これでいいのか。これでいい。
 本のカバーのねこの緑色の目がわたしになにかを語りかけてきます。100万回生きたねこは、たった1回だけ生きたねこでした。
 こっちを向いてくれない異性を追いかけることを「恋」という。じわじわと空間を濃縮させていく手法が用いられている作品です。胸にジーンとしみる読後感があります。
 人はいつ泣くのか。どんなときに泣くのか。絵本のなかで死んだねこは、読者の心の中で永遠に生き続けます。謙虚であること、自慢しないこと。つれあいはひとりしかいないこと。


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