2012年05月18日

外国人が見た古き良き日本 内藤誠編著

外国人が見た古き良き日本 内藤誠編著 講談社

 幕末・明治維新の頃に日本に居た外国人17人による当時の日本の記録です。わたしは、子どもの頃から見てきたテレビや映画の時代劇の影響で、その頃の日本人は、貧しくて暗い生活を送っていたという後ろ向きの思い込みをもっていました。
 ところが日米修好友好条約を結んだタウンゼント・ハリスの「日本滞在記」を読んで、その思い込みが間違っていることを知りました。その頃の日本人は、やさしくて平和で幸福だったのです。海岸線を始めとした自然の美しさや、山の幸、海の幸に恵まれてまるまると太っていたそうです。士農工商という身分制度はあるけれど、人々は身分に分け隔てなく仲がよかったそうです。ハリス氏が見てきた世界のほかの国と比較して、日本は世界中で一番暮らしやすい天国のようなところと記述がしてありました。先日読んだ「破線のマリス」野沢尚著にあるように、画像を加工することによってマリス(悪意)で人々の意識を操作できる技術によって錯覚していました。この本でも、徳川将軍に面会した外国人が、将軍といえども質素な生活をしている。他の外国の支配者は豪華絢爛でぜいたくな生活をしており、これは考えられないことだと記述があります。
 意外だったのは、日本人は復讐心が強いというものでした。しかも、加害者だけに復讐心を抱くのではなく、加害者の家族や組織に対しても復讐をするというものでした。あだ討ちの習慣です。加害者でもないのに殺されたり攻撃を受けたりするのはかなわないと感じました。
 日本の馬たちはなかなか人間になつかないという記述は興味深いものでした。それから、江戸の道幅がものすごく広いとか、商店街の様子、2階建ての建物が並ぶなど、今と変わらずおどろきました。いっぽう、幕末の頃の日本は、外国人にとってたいへん危険な場所・時代だったようで、単に外国人だからという理由で切り殺されることもあったようです。
 切腹シーンはリアルです。おなかにさらしを巻いて血が飛び散らないようにしているとか、首が落ちると動脈から血が吹き出して水溜りのようになるとか、体が後ろに倒れないように着物のすそを足の下にはさんだ姿勢で前かがみになって腹を切るとか、刀を打ち下ろす人はあとで切腹した人の着物を上手にぬがせて自分のものにするとか、刀を振り落とすと首だけではなく相手の膝まで切れるとか、残虐な記述ですが、武士をはじめとした当時の日本人には瞬間的に相手を叩き切ることができるという性質があったことがうかがえます。
 加害者が、被害者の目の前で切腹するのは、合理的で、復讐心を充足するものだと感じました。後々(あとあと)、切腹をしなければならないと明白でもあるのにもかかわらず、部下に外国人を切るようにと指示する上司の気持をわたしは理解できません。切腹制度がない今は、いい時代です。組織で不祥事が起こったときには、「辞任」とか「辞職」という手段で責任をとることができます。命まで奪われることはありません。
 記述者である外国人のみなさんは、たいへん几帳面な記録を残されています。どうやって収入を得て生活していたのだろうかと読みながら心配もありました。けして裕福だったとは思えないのです。わたしが以前訪ねた栃木県日光市の130年前の風景や京都市嵐山の美しい風景も出てきます。本にある白黒写真を見ると40年前の日本の風景とそれほど変わりがありません。何千年も変わらず続いてきた日本の国土の風景は、わずか50年程度で一変してしまいました。都市化、それが良かったのか、良くなかったのかを論じるのはむずかしいことです。この本から、昔、日本人は、自然や季節の変化とともに生きてきたことがわかります。今は人工的に夏でも涼しく、冬でも暖かい環境をつくれるようになりました。
 ラフカディオ・ハーン氏は、西欧文明を強く否定し、日本を世界一の文明国と讃(たた)えています。日本人は自制心が強いという記述からは、以前読んだ「A型自分の説明書」Jamais Jamais(じゃめじゃめ)著文芸社から、当時の日本人は血液型A型の人が多かったのだろうと推察しました。


この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t78937
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい